此岸より遠く眺める彼岸。薄き鏡面にて近く隔つ。
- ★★★ Excellent!!!
とても読みやすく、また趣きのある
怪異の短編集。最初に『鏡を使った咒』の
話があるが、元来、鏡とは呪具であった。
その名残が根底に流れている、そんな話の
数々は、読む者を此岸に置きながら彼岸の
情景を映し出してゆく。
異界へと足を踏み入れるような緊張が、
まるで鏡面の様に張り詰めている。
怖くて不思議、そして何故だかとても
懐かしい気持ちになる様な怪異譚の数々。一つ一つが薄暗闇に茫と光る。
虚実は問わず。
薄く隔たれた皮膜の、うちと外。