第22話

 僕たちの生家である鳴海家の屋敷がマガツキの襲撃によって燃えてしまったことで、生じる幾つもの問題。

 その一つである当家か保有していた大量の物品をどうやって保護するのか、その結論として鳴海家は一旦分家へと貸与することに決定したのだ。


 鳴海家の助けに、いの一番で向かった雪音家は最も重要な家財である情報、全ての書籍を保護して引き上げさせた。

 その流れで鳴海家のもつ書籍は雪音家へと貸与されており、それは今でも続いている。

 僕たちはその大量の本を今、読み漁って自分たちの体のことを調べているのだ。


「何か面白そうな話あった?」


 今、読んでいた伝記を読み終えた僕は別で読んでいる瑞稀へと疑問の声をなげかける。


「いや、私のところもないなぁ。強いていうのであればマガツキと人の子供の話とか?」


「何それ」


「……結構ボカされていることもあって詳しくはわかっていないんだけど、人とマガツキの間に子供が生まれるのか否かという実験が行われたのだとか」


「……えっ?なに、その酷い実験」


 簡単に聞くだけでもわかる。

 そんな実験、どうあろうとも酷く辛い話でしかないだろう。

 陰陽師である僕が言うことでもないが……陰陽師は常にマガツキと厳しい戦いを行っていることもあって、非道な話も多いのだ。悲しいことながら。


「まぁ、実際行われたのか、どうなったのかとかも書かれていないけど……」


「……そうだね」


 行われていてもおかしくない。

 そんな吐き気を催すような話も、それでも、あるかもしれないと思わされてしまう。


「……おっ?」


 なんとも言えない雰囲気の中で本のタイトルを見ていた僕は一冊の本を見て視線を止める。


「何か面白い話でも見つけたの?」


 声を上げた僕に対して瑞稀が疑問の声をあげる。

 

「いや、これまで徹底的に秘匿されていたのか、全然詳しい話が書かれていなかったマガツキについての文献を見つけて」


「どのマガツキ?」


「ほら、少し前。僕たちが読む書籍にちょこちょこ出てきて時代を変えるほどの莫大な被害を出したというのになんの情報もなかった大獄丸についての」


「えっ!?あれについてのがあったの!?」


 僕の言葉を聞いて瑞稀が意外そうな声を上げる。

 それもそうだろう、その大極丸についての話はかなり大規模に情報統制されているのか、名家中の名家である鳴海家でも完全に把握しきれていないらしいような存在なのだ。


「しかも、なんか結構詳しく書かれていそう」


 そんな大獄丸について書かれている本を手に取って中身を確認する僕は所感を述べる。

 見た感じ、一冊丸々大極丸について書かれていそうな感じだった。


「いいじゃん!一緒に読もうよ!」


 僕の言葉を聞いた瑞稀は楽しそうな声を上げて書庫に置かれている二人がけのソファに座ると共に自分の隣を叩く。


「そうしようか」

 

そんな瑞稀の言葉に頷いた僕は本を持ってソファの方に腰掛けて座る。


「秘匿されているマガツキの話とか絶対に面白いじゃん!」


「そうだね……」


 僕は瑞稀の言葉に頷きながら本を開く。


「まずは前置きと当時の陰陽界から……」


「そこら辺はもういいよ!さっさと面白そうな本編いこ!」


「はいはい」


 僕は瑞稀の言葉に従ってほんの一部を流し読みし、重要そんなところまで飛ばしていくのだった。

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