第21話

 汐梨さんとマガツキを戦うようになってからかなり経ち、僕が取り込んできたマガツキの身体の数もどんどん増えていっていた。


 そんな僕ではあるが、それでも陰陽師であって陰陽師ではない。

 鳴海家から雪音家へと所在を移した僕が正式な陰陽師となるのは鳴海家が邪魔してくることもあってうまく行っていない。


「お兄ちゃん!」


 だが、それでも特に不満はない。

 既に僕はずっと欲していた暖かい居場所で妹と一緒に過ごせているのだから。

 みんなが仕事で家に不在の中、僕と瑞稀は二人で隣り合ってソファに腰掛けてテレビで流されているアニメを視聴する。


「んっ、今日もお疲れ」


「ありがとう」


 汐梨さんとのマガツキとの戦いから帰ってきた僕は瑞稀が作ってくれたサンドイッチを食べて自分の小腹を満たしていく。


「……」


「……」


 そんな中で僕たちは互いに無言でアニメへと見入っていく。

 

「ここ、面白かったね」


「そうだね」


 そして、時折言葉を交わし合いながらアニメ視聴を続けていく。


「あっ、もう一クール見切っちゃったのか」


 あまりに熱中しすぎていたせいで、配信サービスで過去に地上波で放送されていたアニメをすぐに見終わってしまった感覚があった。


「まぁ、結構見ているけどね……この後どうする?お兄ちゃん。別のアニメ見る?」


「いや、もうすでにかなりの時間をアニメ見て過ごしているし、別のことしようか。まぁ、僕たちの体について、かなぁ。今の僕はマガツキの接種のおかげで戦えているけど、結局のところ根本の解決には至っていないしね」


「そうだね……私はまだ戦えないままだものね」


「先があまりにも遠くて嫌になるよねぇ」


 問題はあまりにも大きい。

 というのも、陽力だけ、陰力だけを生まれ持った子など誰もいないのだ。

 僕たちが自力で己が戦えない理由にたどり着いたのが奇跡と言えるような話。

 そんな中で、それ以上のことを知ろうとするのであれば非常に困難な道のりなのだ。

 僕たちはもう自分たちと関係していそうな話、伝説を読み漁る段階に来てしまっている。


「大した情報なんて無いなんてないからね。悲しいことに」


「過去の伝承を知るのにも限界があるもんねぇー」


「そうそう、あまりにも厳しい話だよ」


「「はぁー」」


 僕たちは揃って深々とため息をもらす。

 もはや、今の僕たちは地道に頑張っていくことしか出来ないのだ。


「まぁ、それでも頑張るしかないんだけど」


「そうだね、さぁ!今日も頑張ろ!」


「うん、そうだね」


 僕たちは揃ってこの広い家の書庫の方へと向かっていくのだった。

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