第26話
衝撃。
それと共に吹き飛ばされた僕はそのまま己の貼った結界の端にまで到達し、勢いよく叩きつけられる。
「がっふ」
己の手にある剣で相手の攻撃を受け、出来るだけ衝撃を受け流せるように一瞬で防御態勢も取って見せた。
それでも、僕の身体は悲鳴を上げ、口から血が溢れ出す。
「クソったれ……がぁ!」
『ニンゲンっ!!!』
僕が呻いている間にも一瞬にして距離を詰めてきた人鬼が僕に向かって幾度も拳を繰り出してくる。
それを僕は己の体の構造を無理やりにでも捻じ曲げ、己の身体の中に穴をあけ、自分の頭を首の中に仕舞うなどといった手法を用いて何とか回避していく。
「ぶっ倒れろ」
そして、自分の足を伸ばして地面を掘り、地中を辿って一蹴させた形での奇襲によって人鬼の後頭部を蹴り飛ばす。
『にん、……げん?』
「だらぁ!」
人鬼の身体が少しふら付いたのを見て僕は己の手に握られている刀を力強く握って突き刺しに行く。
「……くっ」
渾身の一撃。
だが、それでもやはり人鬼の首は硬く、まるで貫くことが出来ない───一点に、集中させてもダメなのか!?
『にんげんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!』
僕が眉を顰め、体を硬直させている間にも人鬼の身体は俊敏に動く。
初撃の蹴りは回避した、次に振りこまれた右手での手刀も避けてみせた。左拳での薙ぎ払いすらも避けて見せた。
『がぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!』
「あっ、がぁ!」
だがしかし、人鬼の頭突きまでは避けることが出来なかった。
僕の脳天を人鬼の脳天が貫き、振動が僕の脳を揺らし、僕の顔の穴という穴から自然と血が噴き出す。
『がぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!』
そんな僕を叩いたのは人鬼の蹴りであり、僕の身体は一切対抗することもできず、無様に宙を舞って転がり、多大な血を流し続ける。
「げほっ、げほっ」
地面が揺らぐ。
視界が揺らぐ。
思考が揺らぐ。
「……おぇ、げぇ……げぇー、はー、ぜぇ」
僕の口から詰まったような息が漏れ、血の塊が掃き捨てられる。
少し体を身じろぎするだけで恐らくは折れてしまっただろうあばらの骨が痛み、内臓までもが多くの悲鳴を上げて僕へと泣きついてきている。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
口から、鼻から、目から。
ありとあらゆる汁が流れて、激痛が僕の体を苛み、ただただ体が地面を這いずり宣う。
まともに動かせる気がしない。
『にんげんっ!』
「あっ、あぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああ!?」
そんな僕の元に上空から人鬼がその巨体で落下し、己の下半身に直撃する。
「……っ、すぁ。はぁ、はぁ、はぁ……んぇあ、げぇ」
陰陽術に守られているはずの僕の下半身は人鬼の一撃によって完全に粉砕され、右足に至っては完全に切り離されてしまった。
「……ぁ、あぁ……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
それでも、僕は辛うじて動く、白いものが見え、白い粉がパラパラと零れる左足を動かして人鬼から少しでも距離を取ろうと動く。
「あぐっ、えぐっ……がっぁ」
無様に進み、涙を流す情けない己の身体。
『かっかっか!」
そんな僕の体を人鬼は容赦なく蹴り上げ、僕は少しばかり宙を舞ってから再び地面へと落ちてそのまましばらくの間、転がっていく。
「……ぁ」
自分が、生きているのかももはやわからない。
どこまでも深くにまで落ちていきそうな己の意識がある中で、僕は地面を転がり続ける。
「お兄ちゃん!」
それでも、遠くの方から聞こえてきた瑞稀の、唯一人の血のつながった家族である妹の声が僕の意識を留めさせ、その体に動く活力を与えて来るのだった。
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