第25話
人鬼。
僕の目の前に立つ強力なマガツキ……なのだが。
『うぅあ……う、人……人、人ぉ?』
何故だか、目の前に立つ人鬼は僕の前から動くことも攻撃してくることもなく、ただその場に居続けているだけで攻撃をしようとしてきたりはしていなかった。
「……そっちが動かないのは好都合だけどね」
相手が動いていない間に僕はどんどんと戦闘準備を進めていく……いきなりの話であまり札とかも持ち合わせていないが、それでも最低限戦えるだけの用意は常にしてある。
「……お兄ちゃん、大丈夫なの?」
生命までもを隔離することは出来ないという厄介な隔離結界の性質上、安全地帯へと追いやることが出来なった瑞稀の心配そうな声に対して僕は彼女を安心させるように口を開く。
「大丈夫だから……僕に任せて」
すべての準備が終わると共に僕は刀を構えて地面を蹴る。
「陰陽超級、紅蓮爆雷刃」
そして、未だに体を硬直させて戦うそぶりを見せない人鬼へと斬りかかる。
『がぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああ!!!』
紅蓮に燃え、雷をも纏う一刀を無抵抗で喰らった人鬼は汚い悲鳴を上げる。
その体が割れ、炎と雷が傷口を容赦なく広げていく。
「ふぅー」
相手は僕よりも格上だ。
ここで、一気に決めきってしまう───ッ!
「はぁ!」
まずは足首、次は膝、最後に首。
「……かってぇ」
首に振り下ろした斬撃が弾かれたことに僕は眉を顰めながらも行動を止めることはない。
肩、腹、脳天、十文字斬り。
流れるような剣捌きで一切の容赦なく人鬼の体を傷つけ、攻撃し、その体へと深い傷を刻みこんでいく。
「まだまだ……こんなものじゃ!陰陽上級、神楽舞」
多くを斬りつけた人鬼を次に炎で包み込ませ、
「……クソったれが」
僕の使える陰陽術の中で最も高位と言える陰陽超級の紅蓮爆雷刃。
これを全力でフル稼働して振るった幾重もの斬撃で人鬼の身体へと深い傷を植え付け、己の十八番とも言える陰陽上級の神楽舞を使って火だるまへと変えてやった。
既にここまでの流れで並みのマガツキであれば容易に祓えているだろう───いや、何だったら普通の人鬼でもあってもこれだけの猛攻を叩き込めば祓えていた可能性が高いだろう。
「硬すぎだろ、こいつは……ッ!」
それでも、今。
僕の前にいる人鬼は決して今でも倒れる気配がまるで見えない。
堂々たる態度で、炎に囲まれながらも切り裂かれた足を再生させ、再び倒れ伏した地面から立ち上がってきている。
この人鬼は、何処にでもいる普通の人鬼とはその耐久力のレベルが一段も、二段も違うような気がした。
『……にん、ゲん、にんげん』
「……ッ」
火を全身に浴び、その身を常に焼かれながらも人鬼は口を開く。
己の口に火が入ろうとも一切気にしないその態度で人鬼は平然とした態度で口を開いてこちらへと殺意を見せてくるのだ。
『にんげんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!』
そして、遠吠えを一つ。
それだけで人鬼を纏い、焼き続けていた僕の炎は何処かへと消し飛び、出てくるのも予め僕が与えていた傷をすべて再生させた人鬼がこちらの方へと足を一歩踏み出してくる。
『コロシ、てやる……ころしてやるぞ……その、果てまでぇ、にんげんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!』
「……ッ!」
人鬼が叫んだ。
その次の瞬間には僕の前に人鬼が立っており、ほぼ反射的に自分の方へと振るわれる腕に対して防御姿勢を取ることしか出来なかった。
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