第24話

「あれ?最後のところ読めない……」


 その───、一番大事そうな最後の最後のところは掠れて文字が見えないようにされてしまっており、先を読むことが出来なくなっていた。


「い、いや……そんなことより最後のところの内容怖すぎない?全力で脅しに来ているじゃん」


 最後のところが読めないことに不満を覚えていた僕の隣で瑞稀が震えたその体で言葉を話す。

 確かに、既に殺されているとされている大獄丸が実は封印されただけであり、その封印が解けるようなことを示唆するような内容が書かれていればゾッとせざるを得ないだろう。

 だが、それでもこの本が話していることが全て真実である確証があるわけでは決していない。

 

「とはいってもこの本は幾つもある文献の一つ。しかも、多くの文献で既に過去のこととして語られている一件を現在のものであると書いている変わりもので、これうを真実と、するのはぁ……」


 でも、なぜだろうか?

 この本に書かれている内容が全て真実であるという風に確信してしまっている自分がどこかに存在していた。いや、それどころか───。


「……ッ!?」


 僕が内心で、少しだけ自分を失ってしまうかのような、そんな奇妙な感覚を覚えながら考え事をしていたところ、急に二人の目の前に何か、強力な力を感じる。


「な、何ッ!?」


 隣にいる瑞稀が混乱している中で、僕はその感じる気配が何であるかを敏感に感じ取ることが出来ていた。

 ここ最近、いつも感じるようなものであったではないか。


「マガツキッ!?ここは現世だぞっ!?」


 マガノに閉じ込められ、決して外の世界へと出てくることが出来ないはずのマガノ。

 その一つが急に現世の方へと出現し、僕たちの前へと立ったことに僕は驚愕の声を漏らす。なんで、なんでこんなところにマガツキがいるのだ。

 マガツキの生息域はマガノだけであり、ここから出てくることは出来ないはず……出来ないはずじゃなかったのか!?


「危ないっ!?」


 混乱しながらも汐梨さんとの長き戦いの中で訓練された僕の身体は迅速に動き、瑞稀を狙って伸ばされたマガノの攻撃を僕は自分の腕を伸ばすことで跳ねのける。


「お、お兄ちゃん?」


 そこからの僕の行動は早かった。

 自分とは違って未だに戦うことの出来ない瑞稀を後ろへと突き飛ばして目の前にいるマガツキから強引に距離を取らせ、そのマガツキの前に僕が立つ。


『げふっ……にん、げぇん』


 僕が基本的に倒せるマガツキの等級である上級。

 そこから頭一つ抜け、殻を被った超級クラスの強さを感じるマガツキ。

 かつては人の身でありながらも、外法などによってマガツキへと堕ちた存在たる人鬼と呼ばれる怪物。

 目の前にいる人鬼から感じられる知性は希薄であり、確固たる人としての知性を有してこその人鬼とされる中で、目の前にいるこいつはそこまでの強者というわけではなさそうだが……それでも僕が楽に勝てる相手ではないだろう。


「陰陽上級、隔離結界」

 

 僕はこの場にある重要な文献たちが傷つけられないようにするため、現世との壁を形成するための結界を張り巡らせながら目の前にいる人鬼とどう戦うか、頭を悩ませるのであった。

 

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