第40話
大翔が気を失ってしまってからすぐに汐梨が来て、その更にすぐ。
「瑞稀……貴方、どうしたの?」
汐梨が瑞稀の隣へと降り立ち、彼女の変貌について尋ねたときであった。
「あぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!」
突然、大翔が大きな声を上げて吠えたのは。
「キャッ!?」
それと共に、
『な、何だ……!?』
瑞稀の手元から逃げた大翔はそのまま地を駆け、一瞬にして酒呑童子の前へとその姿の立ち位置を変える。
そんな大翔の眼窩は落ち窪み、真っ赤な血の涙を流している。
『はっ?』
瞬きをしている余裕すらもなかった。
酒呑童子の首に大翔がそっと手を伸ばして、触れ……それを思いっきり引きちぎったのは。
首を失った酒呑童子はあっさりとそのマガツキとしての生に終止符を打ち、地面へと倒れる。
「……ぁぁぁぁあ、あぁぁぁ、……ッ、がぁ」
だが、地面に倒れてしまったのは決して酒呑童子だけではなかった。
酒呑童子の首を引きちぎった後の大翔はそのまま地面に倒れ、口から血を吐きながら悶え、苦しみ始める。
「……ッ!?」
明らかに異変であるとわかる大翔の様子に慌てて彼の元に駆け寄ろうとした汐梨であったが、彼女の足元に地面から伸びてきた木の根が絡みつき、その動きを完全に封じ込めてしまっていた。
その木の根が伸びていたのは汐梨の足元だけではなく、瑞稀も同様だった。
『ふぅー、ようやくさね』
そんなタイミングだった。
新手、酒呑童子がいなくなって大翔がちょうど気絶したタイミングで茨木童子がこの場に舞い降りる。
『酒呑童子には悪いことをしちまったね……だが、それもこれもすべては我が王の復活の為だ』
そして、同じ同胞である酒呑童子の死を悼む茨木童子はそっと腕を伸ばして常に大翔が懐に仕舞っていた彼女の爪と牙の入った小さな袋を取り出す。
『良かったよ、この子がアタイとの約束を守ってくれて……だから、常に行動を知ることが出来た』
大翔から袋を回収した茨木童子は瑞稀と汐梨が見守る中で自分の指を折り、彼の口元へとそっと持っていく。
「───ッ!」
その口元に茨城童子の指を入れさせられ、強引に胃の中へと呑み込むことを強要させられた大翔の身体が大きく跳ねる。
『あぁ、とうとう……我らが王が目覚める』
そして、大翔の身体が大きく変貌していく。
『───ッ!!!!!』
そして、次に大翔の声が世界を震わせる衝撃となってマガノへと響き渡る。
茨城童子の、鬼たちの、王が───大獄丸が、目覚めた。
双翼の陰陽師〜追放された落ちこぼれ陰陽師の兄妹は追放先で最強になる。僕たちを馬鹿にして追放した鳴海一族は没落しているようだけど、僕たちにはもう関係ないから知らない〜 リヒト @ninnjyasuraimu
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