第三章
第29話
書庫にあった本を触れてしまったことから本格的に始まった僕の陰陽師としての物語。
慣れぬマガノでの戦いに、スパルタな汐梨さんとの戦い。
そして、己もその妹の命を失うことも覚悟した強力な人鬼との戦い。
雪月家へと来てからの僕の戦いは激闘の日々であった。
それでも確実に僕は成長し、充実した日々を送っていたと言える。
「───」
だが、そんな平和な日常を打ち破るかのように、雪音家の全員で暖かい食事を摂っている中で。
僕と瑞稀は雪音家の当主である涼さんから衝撃の話を聞かされていた。
「……えっ?鳴海家が僕たちを取り戻そうとしている?」
僕は呆然と言葉を返し、困惑の声を上げる。
「嫌だよ、嫌だ!嫌だ、嫌だ!私は戻りたくないよ!?そんなの!」
「……っ」
僕の隣に座っている瑞稀が悲壮な声を上げている横で呆然とただ、息だけを漏らす。
また、戻る……あの冷たい日々に。
「安心してくれ、そこまで面倒な話ではない。大した諍いもなく沈められるさ。だか、それにも少しばかり時間がかかり、二人がここにいられるのも少し不都合なんだ」
「そう!だから、しばらくの間、私と行動を共にしてもらうことになるわ。大阪から離れて少し先のところに」
「そう、なの……?」
「えぇ、そうよ……だから安心してちょうだい。必ず守ってあげるから……だから、大翔も安心して」
「えっ、あ……はい」
少し硬直してしまっていた僕は沙月さんから声をかけられたタイミングでようやく自分取り戻す。
「ご迷惑、おかけします」
そして、出てきた僕の言葉はそれであった。
「大丈夫よ、これくらいなんてこともないこら」
「あぁ、そうだ。家族を守るのは当たり前ののことだ」
「……っ、あり、がとうございます」
ここは、どれだけ温かいのだろうか。僕は肩を震わせながら声を漏らす。
「ほら!湿っぽい話は終わりだよ!さっさと食べちゃうよ!冷めちゃうからね」
僕がそんなことを考える間に、希海さんが食卓の中で元気な声を上げる。
「確かに、そうだな……すまない。食事の前に話すことでもなかったね」
その希海さんの言葉を聞いて涼さんが苦笑しながら言葉を話す。
「ほら、食べようか。頂きます」
「い、いただきます」
「いただきます!」
「いただきます」
涼さんの言葉を受けて、僕と瑞稀、沙月さんが手を合わせて食前の挨拶を口にし、希海さんの作る美味しい料理へと手を付け始める。
「それでも、しばらくはみんなにちょっとした苦労をしてもらうことにもなるかもなぁ……」
食事中の中、涼さんがふと思い出したかのようにぼそりを言葉を漏らすのだった。
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