第36話
随分と縮んでしまった熊童子こと酒呑童子。
『……さて、やろうか。あまり、気が進まないんだけどね』
「……なら、引いて欲しいのだけど」
僕はそっと構えを取る酒呑童子に対して刀を手に取って構える。
「……ッ」
互いに向き合う僕と酒呑童子。
静かに見つめ合い……僕は目の前のいる酒呑童子の隙を伺っていく。
『来ないのかい?』
酒呑童子は挑発するかのような言葉を告げると共に、あえてその恰好を崩して僕に隙を見せる。
「……陰陽超級、天照ノ炎舞」
行くしかない……!
そう判断した僕は陰陽術によって刀に炎を纏わせながら地を蹴り、酒呑童子との距離を一気に詰める。
『流石に熱いな』
僕の一振りは酒呑童子に回避され、その反撃として出された酒呑童子の足を僕もまた回避する。
二の手は僕よりも酒呑童子の方が速い。
蹴りの次に出された素手によって足を掴まれた僕はそのまま酒呑童子の手によって投げられる。
「ふっ」
空中で何とか姿勢を整え、地面に足で着くと共に地を蹴った僕は刀を手に攻撃モーションからわずかに態勢を戻し切れていない酒呑童子へと全力で向かっていく。
『くっ』
僕の刀での一振りは間一髪で避けられたが既にこちらは別の攻撃モーションに移っている。
刀から手を離すと共に伸ばしていた僕の右手はそのまま酒呑童子の細い足を掴む。
「だらぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!」
そして、僕はその右腕を全力で伸ばしながら大きく持ち上げ、そのまま全力で投げつける。
不格好な態勢で投げられて酒呑童子は空中で態勢を立て直すことも出来ずにそのまま近くにあった小さな丘へとぶつかり、その丘を完全に破壊しながら地面へと転がる。
「陰陽上級、神楽舞」
そんな酒呑童子に向けて僕は自分が愛用する陰陽術でもってその身へと炎を向ける。
「……はぁぁぁぁぁぁぁ、陰陽超級、火獄岩津波」
そこからも僕は追撃の手を緩めることはない。
同時に陰陽術を二つ発動し、地面に転がる酒呑童子を左右から迫る灼熱に燃え滾る炎の津波で完全に押しつぶしてしまう。
『はぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!』
そんな僕の炎はすべて、その中心にいた酒呑童子がその身に宿す膨大な力を開放し、マガノ全体を揺らすほどの衝撃波を出すことでそれらを消し飛ばしてしまう。
『……ふぅ、なるほどね。これはあの二人が敵わないわけだ。随分とやる」
そして、炎から抜け出した酒呑童子は大したダメージを負っているようには見えなかった。
「……ちっ」
少しくらいは効いてくれると踏んでいた攻撃を前にしても全然ぴんぴんしている酒呑童子を前に僕は舌打ちを一つ、もらすのだった。
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