第34話

 星熊童子と熊童子。

 共に背丈が2mを超す巨体の鬼である。

 一体は男であり、もう一体は女。

 共に巨大な金棒を一つずつ持っており、その巨大な身体から放たれる豪快な金棒の一振りは容易に敵を殺せるであろう。


「……んっ」


 そんな二体に僕が初めてあったのは確か、非常によくお世話になっている汐梨さんと出会った日だ。

 あの時は僕も戦闘経験がなく、陰陽師としてペーペーもペーペーであり。一目見ただけで手合わせなんて無理だと思ったものだが……。


「瑞稀……ちょっと下がってて。あの二人は、僕が倒すから」


 成長した今ならばそこまで無理という感じでもなかった。


『ほぉ?倒すとは思い切ったことを言ってくれる、俺たちに勝てるとでも?』


『くくく……あまり、思いあがらないで欲しいところではありますがね。さほど戦闘経験も無いような分際で』

 

 そんな僕の言葉に対して二人は挑発するかのような言葉を話していく。


「御託はいらねぇ、なぁ!!!」


 だが、僕が二人の言葉に耳を貸すことはない。

 地を蹴り、一瞬で二人の背後へと移動した僕は反応出来ていない二人のうちの一人、星熊童子の首根っこを掴んでそのまま地面へと叩きつける。


『がぁっ!?』


 そして、床に倒れる星熊童子の体を全力で蹴り上げて遠くへと吹き飛ばす。


『……ッ』


 いつの間にか自分たちとの距離を詰めていた僕に対して熊童子は驚愕しながらも、慌てて距離を取るべく地面を蹴り、ここから離れていく。


「逃げるなや」


 それに対して僕は己の腕を伸ばして逃げる熊童子を掴み、そのまま地面へと叩きつける。


「たしか、お前らは二人でいつも男女二人行動の癖に恋愛感情はなかったんだったけか?」


 再度熊童子を伸ばした腕で掴み、もう片方の腕も伸ばして先に吹き飛ばしていた星熊童子の方も掴んで持ち上げる。


「仕方ねぇから無理やり植え付けてやるよ」


 そして、そのまま二人を強引に引き合わせ、両腕で二人を押さえつけていく。


『……ぁぁぁぁぁぁあああああああああ!』


『こ、これは……ッ!』


 二人まとめてすりつぶすかのようにして強引に両手で押し付けていく。

 肉と肉が悲鳴を上げながらぶつかり、二つの肉から血が溢れ出していく。


『あぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!』


『こん、のぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!』


 そんな中でも二人はガッツを見せ、何とか両腕を押しのけて僕の元から逃げることに成功する。


「ほぉ?」


 そのまま星熊童子と熊童子の二人からそれぞれの腕で手痛い反撃を喰らってしまった僕はさっさと伸ばしていた手を元の長さへと戻していく。


『……ここまで、あがってやがるのかよ』


『随分な、強さじゃないの』


 ようやく解放された段階でも戦意を失わずに星熊童子と熊童子の二人は僕の方へと殺意を向けている。

 だが、既にそのメイン武器である金棒は二人とも地面に落としてしまっている。


「よっと」


 僕はそのうちの一つ、星熊童子が持っていた金棒を手に取り、そのまま軽く振る。


「問題なく使えるわな」


 自分の背丈くらいある感じのする金棒であるが、普通に問題なく使える。

 このまま自分の武器として流用してしまおう。


「さて、いくぞ?」


 そして、金棒を持った僕は二人との距離を詰めるべく、再び地面を蹴るのだった。

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