片手で数えられる人たち
先日の夜、仕事が終わった私は大学時代の友人に会いました。
当時私は法律の勉強の傍ら、カフェでバイオリン演奏のアルバイトを時々してて、そこのお店で知り合った人。
彼女は今は、専業主婦をしながら学生時代から続けているイラストを、カクヨム様の様な投稿サイト(そっちはイラストやマンガの投稿をされる方がメインみたいですが)にアップしているとの事。
そこで彼女は自分のイラストを商品にしたい、と言う夢を持っていて凄く前向きに頑張っていました。
私がカクヨム様に小説を書いていることも彼女には言ってましたが、そんな私に「薫ちゃんは上を目指したいとか思わないの? 自分がどこまでやれるか知りたくないの?」と、ちょくちょく言われていました(汗)
でも、そんな自分の好きなことで人生を開いていこうとする彼女の姿は尊敬できる物だったので、何だかんだ言われつつ「友人兼作者とファン」と言う関係性を続けていました。
そんな昨夜、彼女からラインがあって某ファミレスで会ったのですが、そこで彼女は「もうイラストは描かない」と言ったのです。
え? なんで?
先週、私の送った熊野の写真に「インスピレーションをもらった」って言ってくれてたのに……
でも、どこか投げやり……というか、率直に言うとふて腐れてる感じが気になって、話を聞くと、投稿を続けているイラストへの彼女言うところの「ファン」の人たちからの反応(カクヨム様で言うお星様? PV? ちょっと分かりませんが)が発表する度に減っていき、もう片手で数えられるくらいだ、と言うのです。
「でもさ……片手で、って事は逆に言うとそれだけの人は、あなたの作品を好きで居てくれてるって事でしょ? 私だってあなたのイラストは好きだよ。いつも楽しみにしてる。その人たちもそうじゃない? 自分の存在や作品が誰かに確実に好きって思ってもらえてるの、凄いことだと思うけど……」
そう言うと、それが彼女の逆鱗に触れてしまったようで
「それは慰めになってない。それって私を馬鹿にしてるの? 哀れみ? 薫ちゃんそういうとこあるよね。ちょいちょい綺麗事で痛めつけてくる。ジブンに酔ってる? 薫ちゃんも小説書いてるでしょ? いつか私の気持ちが分かるよ」
と、言ってお店を出て行ってしまいました。
その夜、その子のイラストを見ようとしたら
「ファンの人たちが毎回減ってる。必要とされていないのが分かる。モチベーションが下がったのでいずれ引き揚げます」
と言うニュアンスの言葉が書かれてた……
私は無神経だったのかな……
でも……凄く悲しかった。
友達を無くしたことじゃなくて……それもあるけど。
でも、一番は「彼女にとって『片手で数えられるくらいの人たち』はどうでもいい人たちなのかな?」 と。
もし、私がそのサイトでその子のファンになって、作品が上がるのを毎回楽しみにしてて、それである日見ようとしたら「ファンが減ったからやる気が無くなったので、書くの止めます」と言われたら辛い……
私の存在はその人から顧みられてなかったんだ……と思えてしまって……
私はあなたの作品が大好きだったのに……って。
きっとそう思う。
私のためだけに書いて! なんて傲慢なことは思わない。
あの子も自分の人生がある。
熱量だって刻々と変化するし、それは悪いことなんかじゃ無い。
創造の方向性だって変わるし、それももちろん悪いことなんかじゃ無い。
その結果、今の舞台が合わないと思うならそれは、正しいことだろう。
でも……好きで居てくれた人たちの事を、ポイッと捨てて欲しくは無かった。
せめて、その人達が傷つかない嘘をついてあげて欲しかった。
作り手のあの子がそうなように、好きになってくれた人たちも意思や生活のある人間だ。
みんな忙しい中、時間を割いて作品を見てくれてただろう。
もしかしたら、その時間で学校や仕事へのモチベーションを保ってたかも。
もしかしたら「あの人みたいなイラストを描きたい」と思ってくれてたかも。
その人たちにとってその子のイラストを見て、毎回応援のアクションを起こすことは何のメリットもない。
それでもそうしてくれていたなら、それは純粋な気持ち。
だったら、その人達は100人だろうと数人だろうと宝物のような人たちじゃないのかな?
決して、ポイ捨てするお菓子の空き箱じゃない。
そう思って、彼女にラインしようとしたらブロックされていた。
「薫ちゃんもいつか私の気持ちが分かるよ」
そうなのかな?
でも……傲慢かもだけど、私はその気持ちは分かりたくないし、そうなりたくは無い。
だって、読んで下さってる方々は、私の小説を読むことに何のメリットもないのに、時間を割いて下さっている。
そして手間をかけてアクションを下さっている方もいらっしゃる。
その人達をポイ捨てするような気持ちであれば理解なんてしたくない。
私と読んで下さっている方々は決して「読ませてやってる」みたいな上下関係のある存在じゃない。
あの子と私はもう仲直りは出来ないだろうな……
でも、いつかこのことを話せたら。
傷のなめ合いじゃ無く笑い話として。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます