森の中の図書館
私は図書館が大好きでした。
最近はもう行くことも無くなったけど、大学生の頃はバイトや演劇サークルの稽古が無いときは大抵図書館に籠もってました。
あの異世界に入り込んだような
棚にある様々なジャンルの本から、興味を持った本を何冊か適当に取り出しては、机かソファに座ってノンビリ読む。
なぜか、ああいう場に行くと普段は絶対読まないような、古典文学や
そんな私ですが、当時足繁く通っていたある図書館がありました。
それはとある神社の敷地内にある森の中にひっそりと建っていた図書館。
特に案内板も無いため、本当に人を呼ぶ気があるのかな? と思うほど。
森の舗装路を歩くと、突然開けた場所に出てそこにまさに「ひっそりと」ある場所。
作りもかなり古くて狭い。
室内の壁も所々ひび割れており、照明もかなり薄暗い。
夕方頃になると幽霊屋敷かと思うような不穏なオーラを放っていました(汗)
でも、私はそんな古ぼけた森の中の図書館が大好きでした。
蔵書も多くは無いけど、思わぬ渋いチョイスがなされており、何より子供向けのイベントが多かった。
特に読み聞かせと人形劇が活発で、私もそこでたまたま募集していた、絵本の読み聞かせボランティアを月に2回程度大学卒業までしてましたが、今でも当時のことは良く覚えています。
何の絵本なら喜んでくれるかな……とアレコレ選んだり、このキャラクターはこんな声色でやろう、とか色々考えたり……
当日に子供たちが食い入るように聞いてくれてると、何とも言えない充実感を感じ、さらにやる気になり。
当時はこの読み聞かせが一番の楽しみだったな……
で、その縁で知り合ったお母さん方と、時々図書館周辺の森を散策して野鳥を観察したり、カフェでお茶しながら、アレコレ話したり。
特に、お母さん方や館長さんと一緒に館内にクリスマスの飾り付けをして、読み聞かせ大会を行い、みんなで持ち寄った童話や絵本を、集まった子供達に読み聞かせしたのは、今思い出しても幸せなくらい楽しかった……
今でも大切な思い出です。
幸いそこの館長さんにも凄く良くして頂き、お勧めの本なんかも教えてくださいました。
「絵本は子供の心の栄養。読み聞かせは美味しく食べるための調味料」とよく言っていた、本当に童話と子供の好きな人でした。
図書館と館長さんが好きすぎて、今書いている「リムと魔法の消えた世界」の第1話に出てくる図書館やユーリおじいちゃんは、この図書館と館長さんをモデルにしたくらい。
いつか自分が物語を作るようになったら登場させたいと思ってたんです。
そんな図書館も、私が就職して2年が過ぎた頃閉館しました。
その知らせをお母さん方の一人から聞いたときは、部屋で涙がこみ上げてきました。
せめて最後の日くらいは顔を出したかった……
ご高齢だった館長さんが病気で突然亡くなられた事もあっての事だったようです。
あれからもう読み聞かせをすることも無くなりましたが、あの時の経験があって今でも童話を読むのは好きです。
森の中にひっそりたたずむ幽霊屋敷みたいな図書館。
ホントに楽しい思い出でした。
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