甥っ子とテンプレート
私には今度の12月で8歳になる甥っ子が居る。
彼は、男の子なので普段は公園を駆け回ったり、鉄棒をする事が大好きなのだが、私が遊びに来たときだけは毎回「ごっこ遊び」をしたがる。
そのごっこ遊びの特徴は甥っ子自身を主人公にして、開始前に私が考えた設定や世界観、ストーリーの流れを聞かせ、甥っ子の選考を通過したら開始。
そこからは主人公の甥っ子と、それ以外の役の私によるロールプレイで進んでいく……という物だ。
そして、今日の午前中も弟の家に行き「お姉ちゃん! 『ごっこ』しよ!」と勇んで駆けつける甥っ子に、設定を聞かせた。
ただ……ここ最近、私の用意する設定に甥っ子は中々満足してくれない。
私は毎回気合いを入れて、相応に主人公(甥っ子)にとって山あり谷あり起伏のある展開を用意しているつもりが、途中から露骨に不満を表すのだ。
「最近、お姉ちゃんつまんない」と(笑)
おいおい、正直すぎ!!
とは言え、甥っ子にとってこういうごっこ遊びは、情緒面や想像力において絶対プラスになると信じてるので、可能な限りやってもらいたい。
どうしたものか……
よし!こういう時は顧客のニーズを調べて、それに応えることだ。
そう思い、甥っ子に「じゃあ、甥っ子君はどんなのがやってみたい? お姉ちゃんに教えてもらえるかな?」と聞いてみた。
すると甥っ子が答えた物が以下の2つの内容。
(1)僕(甥っ子)がクラスの「マイカちゃんとユアちゃん」から一度に「好き。付き合って」と言われた。
でも、そこに嫌ないじめっ子が現れて、僕をやっつけてマイカちゃんとユアちゃんとの仲を邪魔する。
でも、怒ったマイカちゃんとユアちゃんがその子を追い払った。
そのうち、マイカちゃんとユアちゃんも僕を取り合って喧嘩するけど、僕が「マイカちゃんが今は好き。でもユアちゃんも好きだから」と言うと、二人は仲直りして二人とも僕をやっぱり大好きだ、と言う。
(2)僕がサンタさんから「ドッチボールで最強になる魔法」をかけてもらった。
それでクラスの体育のドッチボールで、悪いいじめっ子から僕ばかりにボールを投げられたけど、全然当たらず逆に僕のボールでみんなをやっつけた。
それで、みんなからビックリされて「凄い!」と言われた。
と、言う内容。
なるほどなるほど。
そういえば、甥っ子君は勉強は出来るけど運動が苦手で、クラスの悪ガキによく体育の時にからかわれてる、って弟が言ってたな……
早速、そのアイデアを元に進めると、甥っ子君が驚くほどにのめり込んだ。
開始から2時間経ち、続編も急遽行い私が帰る時間になっても必死に引き留めてきて、弟に怒られてたほど。
帰りの車で私は改めて驚きと共に、思い返していた。
う~ん。
いつも冷静な甥っ子君のあんな顔、初めて見た……
と、そこでハッと気付いた。
あれ?これって……
そう!最近、急激に興味を感じて色々調べ始めている「なろう系・ハーレム系のテンプレート」じゃない?
(もちろん、実際のテンプレートはこれよりも比較にならない程高度な様式美を持っているなあ、と思ってますが……)
もちろん今度8歳になる子供がそんなテンプレートを知ってる訳がない。
多分、よく見ているYouTubeの配信から影響を受けたんだろう。
に、してもやはり人が「心地よい、夢中になる物語の型」と言うのは想像以上に普遍的でかつ、こんな歳の子供でも感じるものなのか(汗)
様式美、恐るべし。
そう思うと、ああいうテンプレートの本能に訴えかける心地よさ、と言うのはやはり、物語を作る上で意識しなくちゃだな……と、7歳の子供に教わったのでした。
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