幻想世界の変革旅行

　その世界には争いがなかった。悪意も差別も貧困も、人々を苦しめるあらゆるものがその世界には存在しなかった。同時にその世界には変化がなかった。変わろうとする意志もきっかけも目的も存在せず、世界は停滞していた。

　少年は疑問に思った。なぜ世界に争いが起きないのか。なぜ犯罪が起きないのか。なぜ世界は進歩しないのか。なぜほかの人はこれらの事実に疑問を抱かないのか。少年はその解を求め自らのいた国を飛び出し、そして、どこかへと消えた。

　数年後、少年はかつて自分のいた国に帰ってきていた。当然のように一切変わっていない景色を見ながら呟く。

「さてと、どうやってぶち壊そっかなーこの国。最初だし派手にやりたいよねー」

　ただ一人の人間の意思によって世界は動き始めた。秩序と善意で築かれた不変の楽園が、混…続きを読む