第二章 たとえ未来が決まっていようと①

「それがお主の旅の始まりか。なかなかに面白いスタートを切ったようじゃな」


 二人は、次の目的地であったデモクレシア共和国の宿にいた。 ラグナはベットにで寝転がりながら口を開く。


「あぁ。今でもあれが最高の始まりだったと思っているよ。あの花火、君にも見えたのかい?」

「あの森の中じゃからなぁ。音ははっきり聞こえたが、直接は見れんかったよ。後々映像では確認させてもらった。実に派手な爆発じゃった」

「褒め言葉、ありがたく受け取らせてもらうよ。それで、ぼくはしばらく待機でいいんだよね?」

「うむ。どのような経路を通るとしてもお主の出番はまだ先じゃからな。いまは休んでおれ……あぁそうじゃ純粋な疑問なんじゃが、ユウナじゃったか。彼女を連れていくという選択肢はなかったのか?」

「そうだね。選択肢の一つではあったよ、間違いなくね。ただ、いま彼女がぼくに付いてきたら。ぼくの後ろを歩くだけになるかもしれないと思ってね。彼女にはもっと経験が必要だ。それでまた会ったとき、彼女が望むのであれば、ともに旅をしたい。そう思っているよ」

「なるほどのぉ。それがお主の判断なんじゃったら何も言うことはない。では、始めてくる。楽しみに待っておくとよい」

「あぁ。楽しみにしているよ。メモリア」





(さてと、誰から始めていくとしようかの……子供からじゃろうな。特に迷信じゃとか占いなんぞを信じそうな単純な子はいないじゃろうか?)


 メモリアと呼ばれた鬼の女性は怪しげな占い師のような服装をしながら、国の広場に座っていた。


(まぁすぐに見つかる必要なぞ無い。のんびりとやって行こ……ん? あやつ、何をしておるんじゃ?)


 メモリアは視界の端にこちらを興味深げに見つめる少年を見つけた。


(あやつがよさそうじゃの。まさかこんなにも早く見つかるとは思っておらんかったが。楽でいいのぉ)


 メモリアは立ち上がるとその少年のもとへと歩いて行った。少年は驚いたように逃げようとする。


「安心せい。わしはお主に危害なんぞ加えんよ。少し話したいことがあるだけじゃ」

「……本当に?」

「本当じゃ。わしのことが信じられんか? 明らかに怪しい見た目をしておるのは事実じゃが」


 少年は怯えながらも逃げようとするのを止め、怪しげな占い師のもとへと近づく。


「うむ。単刀直入に聞くが、お主は自分の未来に興味はあるかね?」


 フードに隠れて顔はよく見えないが、唯一見える口元はひどく楽しそうに歪んでいた。





(ぼくの場合は、最終的に殺すことでしか世界を変えていけないわけだけど、メモリアの場合はどうなるんだろうねー。直接殺すことはできないだろうけど、面白い感じになりそうだよねぇ)


 ラグナは宿屋の中で白と黒の双剣を片手間に振りながら思考に耽る。その動きには無駄がほとんどなく何年もその武器を使い込んでいるように見える。


(えぇっと、もうすぐ夜だよねーそろそろ帰ってくると思うんだけど……)


「何しとんじゃお主、仮にもここは宿屋じゃぞ。備品を傷付けたらどうするんじゃ」

「あ、おかえりー。まぁ問題ないでしょ傷つけても。というかそんなことはどうでもいい。順調かい?」

「うむ。まぁやったことは数名の子供に自らの未来を教えてやっただけじゃがな」

「なるほどねー。楽しいことになりそうだねこれから」

「じゃな」


 そういうメモリアの顔はとても楽しそうに笑っていた。


(会った時の退屈そうな表情は、もう欠片もないね。そりゃ1000年間もあんな日々送ってるんだから、今は本当に楽しいだろうねー)


 ラグナは、メモリアと出会った時のことを思い出す。ダイバステア連邦で起こした事件のことを。





 リスタルト王国での事件からすでに3ヶ月が経過していた。ラグナはその間2つの国を巡りそれぞれに変化をもたらしていた。そして次の目的地は――


(もうすぐ到着かな? ダイバステア連邦、あらゆる種族が共存する国、今の世界だからこそ実現しているある種の理想郷的国家。それ自体は良いことなんだけど間違いなく。でも、正しいのかなぁそれ。種族間の争いは間違っているかもしれないけど、 争いがないことは本当に正しいことなのかな? まぁそんなことは考えても分からないわけだし、ぼくはぼくのやりたいことを貫き通すだけだね。さぁ、頑張ろうか)


 気合いを入れて歩いていき、2日ほどでダイバステア連邦に到着した。そして――


「なんでぼくは今、牢屋に閉じ込められてるんだろうねー?」


 気が付いた時には、ラグナは牢屋に閉じ込められていた。





あとがき

 というわけで、第二章スタートです。割と大事な章になる気がしてるので、お楽しみに!

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