第一章 出発は思いっきり派手に①
ウォーレリア王国の事件から数日が経ち、もうすぐ次の国へと到着しようとしていたころ、二人は変わらずとりとめのないことを話しながら歩いていた。
「そういえばなんじゃが、ウォーレリア王国で、動き始めた国は7つ目じゃったか?」
「えぇっと……うん、その通りだね。君と会ったのが4つ目のダイバステア連邦で、その後、なんやかんやあって国民全員がゾンビみたいになったネバーフィン帝国、農業中心の国なのに自然が消え去ったウィザーディ民国、そして今回のウォーレリア王国って感じだから……ゾンビ化は動き始めたって言っていいのかな」
「いいじゃろ別に。あれのほうが数倍何かを生み出す可能性がある。死んでおるが」
「それもそうだねー。次は君が中心でやる予定だけど、どんなふうにするかは、考えているのかい?」
「なんとなくはの。とはいえ、作戦を考えるのもかなり久しぶりじゃからの、うまくできるかはわからぬが……そうじゃ。そういえばわしと会う前おぬしが何をしたかは理解しておるが、細かい経緯なんぞは聞いておらんかったの。参考がてら、聞かせてはもらえぬか?」
「ん、いいよー。君と会う前かぁ。結構最近のことなのにすごく昔のことのように感じるねー」
懐かしむように目を閉じ、口元を緩める。
「それじゃあ話そうか。ぼくの旅の始まり、リスタルト王国での出来事を」
リスタルト王国、その国は大陸でも最長レベルの歴史を持つという点を除けば、良くも悪くも普通の国だ。他の国と違い目立った特徴がなく、それ故に多くの人にとって暮らしやすい環境をもつ、そんな国。
そんな王国の中心部にある広場のベンチにひときわ目立つ姿をした人間がいた。銀髪と青い目を持つ男にも女にもみえる顔をした人間が。だが、明らかに人が興味を示す外見をしていながら、誰もその存在に目を向けなかった。まるで、何もいないかのように。
(さてと、改めて国を見てみたけど、やっぱり何も変わってないね。そういうものだとは理解してるんだけど、なんというか複雑な気分になるねー)
未来では世界を変えるテロリストとして活動しており、常に笑顔で様々な破壊活動を行っているその人間は、どこまでも退屈そうな表情で国を眺めていた。
(あと五日ぐらいで準備は終わるかな。それまではまだこの退屈が続くわけで……はぁ、憂鬱だね。なんか面白いこと起きないかなー。突然何かが爆発したり、モンスターが襲ってきたり、殺人事件が起きたりしないかなー。しないよねー……はぁ)
「あの、えっと、なにしてるんですか? お兄、さん?」
(そうそう、この世界にそんなこと期待しても無駄だよねー。こんな風に突然話しかけられたりすることすらないんだから……ん? あれ今ぼく話しかけられてない?)
あまりの想定外の出来事にかなり遅れて声のほうを見ると、そこには12歳ぐらいに見える少女が、好奇心に満ち溢れた眼をしてこちらを見ていた。
(まさか話しかけられるとはね。そもそもどうやって僕に気づけたんだろうか。それに直感的に性別も見抜いているし……にしてもいい眼をしてるねこの子。こんな世界で、こんなにもわくわくした眼を見れるとは思ってなかったねぇ。うん、面白い)
「何をしているか、ね。君にはぼくが何をしているように見えたんだい?」
(とても楽しい、暇つぶしになりそうだね)
先ほどまでの退屈そうな表情は消え去り、好奇心に満ちた楽しげな表情に変わっていた。
ユウナ・シュレイは今日も広場に一人遊びに来ていた。ここに来ればいつも友達がいる。彼女にしか見えない友達が。だから、その人を見たとき、はじめはいつも遊んでいる友達の誰かかと思った。彼ら彼女らと同じでほかの誰もその姿を認識しておらず、また、その表情がすごく退屈そうだったから。
(あれ? なんだろう……似てるけど、違うような。誰だろうあの人?)
集まってきた友達に彼について聞いてみるが、誰もその人について知っている子はいなかった。自分たちとは違う存在だと思うと、不思議そうな表情で教えてくれた。
(誰も知らないんだ。ということは、まったく別の場所からここに来た、のかな?……気になるな。あの人について、知りたい)
彼女は、この世界においてかなり珍しいといえる好奇心を持ち合わせていた。知らないもの、分からないものを、避けようとせずに、理解しようと前へ踏み出せる意思を。
「あの、えっと、なにしてるんですか? お兄、さん?」
その瞬間、止まってしまっていた世界が動き始めた。居場所を求めさまよっていた一つの
あとがき
少し短めですが、第一章スタートです。この章は、基本的には世界観とかの解説が中心となります。あと、主人公の名前はこの章でちゃんと出るのでそれまではお待ちください。
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