自分のための英雄④
「仲間に? えっとそれは、犯罪を手伝ってほしいと?」
「まぁその通りなんじゃが、ふむ。何から話すべきじゃろうな……わしらはな、世界を変えようと思っとるんじゃよ。この狂った世界をな」
「狂った、世界?」
「お主はよくわかっておるはずじゃ。理由のない善意とやらに、お主は違和感を感じたのじゃろう? わしらが変えようとしてるのはそれじゃ。お主、あの善意の正体を知りたくはないか?」
メイアはその言葉に、半ば反射的に頷いていた。自分が一番知りたかったことがそれなのだから。
「では話そうか。まずは、神様という存在について――」
ラグナは既に20層を超えていた。ようやく敵からシステム感が消えてきており、戦闘練習にはちょうどいいくらいの難易度にはなっていた。
「っと危ない。ちゃんと避けなきゃ当たるねこれ。そうそうこういうのだよね。こういうのがダンジョンでしょ……あ、トラップかなあれ? 見た目的にモンスターハウスってやつっぽいね? 一回引っかかってみよっか」
面白そうなので、発見したそれに当然のように引っかかった。
(さてさて、こういう状況でもちゃんと戦えるのか確かめないとね。何匹くらい出るかな? 逃げ場がないくらい出てこないか、な?……え、少な?)
想定していた量の半分以下の少なさに、一瞬思考が停止した。当然モンスターが襲ってくるが、反射で避け、急所を貫いた。
「えぇ……? こんなに少ないってマジで言ってる? トラップですらないじゃんこんなの。えぇ……ふざけんなよ神様さぁ。面白くないなぁほんとに。はぁ……」
大きく溜息をつくと、再び走り始めた。
「あぁーなんなんだろうなーこれ。人が死なないこと、事故が少ないことを悪いことだというつもりはないけどさぁ。これは違うじゃん。ダンジョンってのはミスったら死ぬ可能性があるものでしょ。そういう環境だからこそ人は強くなれるのにさぁ。神様はヒトを愛してるつもりなのかな? ヒトから可能性を奪い去っておいて、何が愛してるだよ」
(あぁだめだ。ここに長くいると神へのイライラが溜まりすぎる。早くクリアしてしまおうそうしよう。もう楽しさとかどうでもいいから最高効率でいこう)
ラグナは姿を消すとさらに加速し、敵をすべて無視していった。そしてボス部屋に到着すると、右手をボスに向け呟く。
「さぁ、『ねじ曲がれ』。よし、早く行こう」
その瞬間、ボスだったオークキングの心臓が一瞬で捩じ切れ、絶命した。
(思ったより簡単にできたね。ぼくがイライラしてるからっていうのもあるのかな? 感情によって能力が強くなるなんて言うのはよく聞く話だよねー。まぁ効率が良くなるんだから細かいことは気にせずに進んでいこうか)
超ハイペースでダンジョンを突破していった。道中は姿を消すことで突破できてしまうし、ボスは心臓捩じ切ってワンパンできるしで、どんどん神様へのイライラが溜まっていく。
(こういう攻略してるのはぼく自身だけどさぁ、もっとなんかこういう攻略ができないようになってるのがダンジョンってやつじゃないのかな? ぼくが姿を消したのに合わせて反応するトラップとか、ぼくがいる次元を認識する敵とか、心臓失っても動く敵とか、そもそも心臓捩じ切っても死なない敵とかさぁ、用意してくれてもいいじゃんか)
そんなことを考えながら進んで行くうちに、ラグナは50層のボス部屋の前についていた。
「頼むから最後のボスくらいは即死しないでよ? ホントお願いだからさ」
そう思いながら部屋に入った。そこにいたの様々なモンスターが合わさったキメラというべき存在だった。ラグナはとりあえず心臓を捩じ切ろうとするが――
「ん? ありゃ、外したかな? それとも複数心臓があるのかな? どっちでもいいんだけど、まだ生きてるみたいだね。最高だよ」
本来心臓があるであろう場所を捩じ切ってみても、それは絶命することなくラグナに突撃してきた。ラグナは突進を回避すると、しまっていた白夜と極夜を取り出し構える。
(まぁキメラだし、複数脳や心臓があってもおかしくないよね。だったら正攻法でやろうか。よしよし、よかった。流石に最後は楽しめそうだね)
「さぁ、楽しもうじゃないか。キメラ君。簡単に倒されてくれるなよ?」
あとがき
ラグナはやろうと思えばこんな風に相手を即殺しまくれるので、効率重視にするとほんとに一瞬で終わります。次回の戦闘は楽しめるのでしょうか?
ラグナが言っていたように、この世界の魔法の類は本人の感情によって威力や効率が上下することがあります。同じリソースを使っても効果に差があったりするのはこういう理由があると思っておいてください。
次回からは更新頻度が少し下がると思いますのでご了承ください。
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