第4話 呪い
「......聞こえなかったのか? ここは200階層で、最下層。 って、な、なんじゃその顔は」
「い、いや......だって、最下層ってつまり、SSSランクダンジョンの......最下層ってことで」
「うむ、そうじゃな。 お前がはじめてじゃよ、ここまで辿り着いた外部の人間は」
開いた口が塞がらない。どうして......さっきまで125階層にいたのに?
いっきに75階層をすっ飛ばして、最下層のB200だって?なにをどうしたらそうなるんだ。
十階層ごとにいるであろう、フロアボスすら見てもいないのに......
え、あ、もしかして、僕からかわれてる?
「あぁ、成る程ね、びっくりしたぁ」
「いや驚きたいのはわしのほうじなんじゃけど。 見るに川に流されてこの泉に行き着いたようじゃが、普通そんな経路でここまで到達する事はできんからのう」
「......」
「え、なに、わしの言うこと信じられないの? ガッチングショックなんじゃが」
ガッチング......え、なんて?いや、しかし視線の動きや、体の動き......この少女は嘘を言っていない。
「ほ、本当に、B200なんだ。 最下層、ここが......全ての冒険者や国のトップが喉から手が出るほど到達したかった、最難関ダンジョンの......秘宝エリア」
てか、最高難度のダンジョンの攻略法は、迷宮に流れる川に流される事だった......?
いやいやいや、まてまて、冷静に考えて。あり得なくないか?それで最下層へ到達できるなら、とっくに攻略されているはず。
じゃあ、なぜ僕はここへ来られた......?
「......川にも強力で凶暴な魔物は数多く存在する。 なのにお前はここまでこれたし、現に此処におる。 もしかすると、『流されてきた』のではなく、『迷宮の意志で運ばれてきた』の方が正解なのかものう......」
「迷宮の意志? このダンジョンが僕をここまで導いたということ......?」
「んー、まあ、かもしれない。 いや、まあ、そんなことはどうでもよいんじゃけどさ、考えてもわからんし」
え、よくはないでしょ?
「ところで、おまえこのダンジョンから出たいか?」
「え!?」
唐突な質問に僕はパニクる。ダンジョンから出たい!ものっそい出たい!出られるなら、この少女の言うことをなんでも聞くまである!
「で、でたい! もちろん!」
その答えに、彼女はふむ、といい何かを思案していた。
「うむ。 出たいのであれば......出れるが。 ただ、どれだけの時間がかかるかわからぬぞ。 まあ、早いか遅いかは、おまえ次第じゃの」
「......それって」
少女は頷いた。
「そじゃよ、出るならば......おまえは自分の力で、強くなってここからでるんじゃ」
......そ、そんな。
比較的あっさり最下層へと到達できたから、出られるのも何か抜け道があるのかと期待してしまった。
そんなものがあるものなら僕は捨てられてなどいないというのに。
再び絶望で眼前が暗闇に落ちる。
「それは......無理だよ、僕に戦う力はない。 ヒーラーではあるけど、その唯一の能力であるヒールだって魔力が少な過ぎて一度つかえば枯渇してしまうんだ......だから無理だよ」
そう、僕にはまともなヒール能力もない。一度つかえば確かに大怪我ですら治るけど、魔力の枯渇により体は動けなくなる。
そうなれば僕はトドメをさされるだけだ。ここまでは運良く生き残ってきたけど、そんな強運いつまでも続くはずはない。
「それじゃヒールしてみて」
「え?」
「まあまあ、よいから。 ほれ、してみ」
な、なんだ......回復魔法が見たいのか?
「ヒール!」
紅い光の粒が集約され、川に流されてきたときについたかすり傷や打撲が癒しの魔法により癒された。
――そして、僕は気がつく。
「......え、あれ? なんで」
いつものがこない。ヒールを放った後におとずれる重くのし掛かるような疲労感と、脱力感。
いま、確かにヒールを放ったはずだが......どういう事だ?
おもむろに腰を上げると、スッと立ち上がることができた。それどころかジャンプして走ることもできた。
視界も良好だし、まだヒールも放てそうだ。......なぜ?
「嘘だ......なんだこれ。 いつもなら魔力の枯渇で全然動けなくなるのに......。 もしかして君がなにかしたの?」
「そうじゃなあ。 それに答える為に、まずはおまえがさっきまで浸かっていた泉をみてみろ」
ふと、泉へ目をやる。
すぐそこに広がるのは金色に輝く美しい水面。
「お前はこの泉の水を飲んだ。 おそらくそれが原因じゃ......その証拠に片目が落ちとるし」
目玉!?これ、怪我じゃ無かったのか......しかし、そうだ。溺れ流され、その過程で僕は水を
「......飲んだ......のか」
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