第17話 なれ
これ、明らかに僕の事を試しているな......魔族か?とにかくこいつをどうにかしないと彼女がゆっくり休めない。
「それじゃ、ちょっと始末してくるね」
「え!? ちょっと始末してくる!!? あ、あ、アンデッドテラーですよ......? 本来、魔王城を住みかとしている上級魔獣......アンデッドテラーを一体相手にするには、上級聖騎士の一部隊を率いて戦わねば勝てないと言われてる」
そう、確かレートはA+だったかな。
「大丈夫、僕、一回やったことあるから......じゃ、待ってて」
外へ向かおうと、テントの出口へ手をかけた時、後ろから「え?」という声がした。
「ん?」
「えっと......もしかして、その軽装のままで行かれるんですか?」
「うん、まあ、服これしかないし」
「あ、あまり意味がないかもしれないですけど......私の戦闘で着ている革鎧お貸ししますか? そ、そのままでは攻撃がかすりでもすれば死んでしまいますよ......! アンデッドテラーは毒を持っていると聞きますし!」
「毒と言うか、正確には強酸性の肌だね。 触れれば致命傷っていうのは間違いないけど」
少しでも触れてしまえば酸が全身を侵食し、あっというまに命を奪われてしまう。
「で、ででで、ですよね?? じゃあ、私の」
「いや、攻撃は避ければいいから大丈夫。 ごめん、時間ないから行ってくるね」
「......え、よけるって、え? よける?」
そうして今度こそ僕はテントを開き、外へと出た。
アンデッドテラーは確かに強い。やつらには人型、獣型、スライム型と、主に三種類のタイプがいる。
特にスライム型は厄介で、コアがゼリー状の肉厚な体の中心にある。つまり、三種で一番ガードが硬く殺すのが困難なのだ。
さらに変幻自在の攻撃と、素手でさわれば一瞬でとかされてしまう酸性の体。更にはベアウルフの数段上の機敏さ。
――テントから出た俺はアンデッドテラーの姿を確認する。あ、スライム型か......確定だな。
魔族の誰かが俺を試している。しかもアンデッドテラーを使役できるなんて、おそらくかなり上位の魔族だな。
まあ、しかし所詮アンデッドテラー......
ナイフを鞘から抜き、オーラを込める。
「......下層の魔物より、弱い」
込めたオーラで微かに赤く光るナイフ。それをアンデッドテラーへと投げ放った。
ビュオッ!!
投げたナイフは空を切り、やがてやつの体に到達。パァンッッ!!!という破裂音が響き、中心に小さな穴が空いていた。その直線にはアンデッドテラー(スライム)のコア。
的確な投擲により、一撃でアンデッドテラー(スライム)のコアを射ぬく事に成功。
ブッ――ブシュアーーーッ!!!
まるで水分が蒸発していくように、蒸気をはなちながらアンデッドテラーの体が消えていく。
残ったのは、中心部にあったコアの残骸。
「アンデッドテラーのコアは加工すれば武器の材料となる、か。 とっておこう」
しかし冒険者登録は抹消されているからな、報奨金は貰えない。けどまあ、素材としては高値で売れそうかな。
そんな事を考えながらテントへと振り向くと、そこには目を見開いた彼女がいた。
「......あ、あ、アンデッドテラー......が、一撃で......ふえぇ......」
「あ......えっと......ま、まあ、狩り慣れてるから!」
狩り慣れている?ここらにいるはずのない、魔王城を住処にしている魔物を?
我ながら、おかしな言い訳だなと思ってしまった。
けど、狩り慣れているのは本当だ。
ユグドラシルの迷宮の中層部にもアンデッドテラーは生息していたから。
まあ、それも魔王がダンジョンへ探索に出した魔族が死してアンデッドテラー化したらしいんだけど。ノルンに聞いた話では。
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