第20話 スノードロップ (ロキ 視点)
「おい......まだつかねえのか、ロキ......」
「......いや、もうすぐのはずだ」
「そう言ってお前、何時間たったと思ってんだよ」
「ひ、ひからびちゃうんですけど......」
「......」
「ひ、日差しも強いですしね......無理もありません」
ちっ、くっついてくるだけの奴が文句垂れてんじゃねえよ!
......そういや、確かレイがいるときはあいつに先導させてたよな。
あの頃は目的地まですんなり到着してた気もする......いや、むしろ早く着いていた気がする。
「......レイは......」
ん?なんだ、珍しくフェイルが口を開いた......?
「......いつも、天候とルートを念入りに確認していた......今日みたいな日には気温の下がった隙に出発をうながしていた」
そういえば......出発を遅らせる事が何度かあったな。あれにはそういう意味があったのか。
白魔導師のカナタがそれに反応した。
「それはきっとメンバーの体力を無駄に消費させないようにとの配慮でしょうね。 敵と対峙したときにベストなパフォーマンスを発揮できるように......」
「......うん、そう」
「いやねえだろ、あいつがんな器用な事できるわけねえよ、はっ......どうでも良いが、頭いてえ。 昨日は飲み過ぎたぜ」
スグレンストが笑い捨て、重い頭を手でさする。
あんだけ浴びるように飲んだらそーなるだろーが。ばーかばーか。ざまあみやがれ、はっ。
そんな事を考えていると、ヒメノも何かを思い出したようで口を開いた。
「んんん、でもでも......レイが居た頃って、スグレンスト、二日酔いしたことなくない?」
「......あー、確かになぁ。 なんでだ?」
「......それは......スグレンストのお酒、レイがこっそり薄めてた......二日酔いで魔物と戦うのは、いくらスグレンストが強くても危険だからって......」
「マジでかよ。 ははっ、ロキよかよっぽどリーダーみてえな事すんのな、あいつ」
......てめえ。くそゴリラが。
「おーおー、冗談だぜぇリーダー様? そー睨むなってーの」
「あ、ロキさん、皆さん! ダンジョン、見えましたよ!」
大きな赤い門があり、その下には大量の色とりどりの花が咲き誇る。
あれはダンジョンでの死者へ手向けた花の種が自生したもので、黄泉の入り口とも呼ばれる。
ここはAランクダンジョン、『死の夢扉』
――王都から西へ行くと、山脈沿いに寄り添うように鉱山の洞窟がいくつもある。
二年前、その内のひとつに眠っていたダンジョンの入り口を、鉱員達が堀り当ててしまった。
未登録ダンジョンだと言うこともあり、侵入したとしても罰則は無いのを良いことに鉱員が五十名ダンジョン内へ。
目的は秘宝とダンジョン内の希少鉱石。
しかしその全てが死亡。
一般人は冒険者や聖騎士とは違い、ダンジョンの危険性の認識が甘い場合が多い。
そして、不幸にも偶然見つけてしまったダンジョンにお宝の夢を見て扉を開けてしまった。
それがこの『死の夢扉』というダンジョンだ。
「......ギルドで貰った通行証を、この扉の脇にある魔紋へあててっと」
ゴゴゴゴ......ッ!!!
特殊な魔力が流れ扉が開く。
「さて、入るぞ......カナタのデビュー戦だな」
「よ、よろしくお願いします......!」
「うおー、ダンジョンの中暗いなぁ? カナタ、魔法で明るくしろよ」
スグレンスト、こいつ......リーダーでもねえくせに偉そうに。
「カナタ、ランプお願いできるかな?」
「はい!」
返事をすると、カナタは背負っていたリュックからランプを取り出し火をつけた。
「あなたも魔法で明るくできないの?」
唇に指をあてながらヒメノがカナタへと聞く。
「え、そんな魔法あるんですか?」
「あー、やっぱり? てっきり白魔法かと思ってたんだけど、レイがよく使ってたし。 あれってレイにしか使えなかったのかなぁ? あなたの前にいた白魔導師も使えなかったしさ」
「......ああ、成る程。 多分そうだと思いますよ。 レイ様は魔法も色々と調べ研究していたみたいですから」
レイにしか使えない魔法だと......いや、確かに原理がわからなかったな。
だからこそこうしてランプの火を頼りにダンジョンを探索している訳だが。
ランプって消えやすいんだよな。しかし、他の冒険者もこうしてダンジョンを攻略しているしな。
レイはそういう所も補っていたのか......。
いや、まあ、いい。とにかく、この『死の夢扉』を攻略しようか。
「......スノードロップ......」
フェイルが不意に言葉をもらした。
「......ん?」
「......ここに咲いている花だよ......」
「ん、ああ。 そうか......」
――そうして俺たちは扉を潜った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます