第6話「謎の時間」

「ん…あ……」


 大きな欠伸をして目が覚めた。


 目を開けてみると眩しい光が差し込んできて、鳥のさえずりが耳に飛び込んでくる。


 まさに清々しい朝だった……のだが多数の視線を感じ俺は怪訝に思った。


 実際幼なじみ達が俺を見つめてきており、その視線はあり得ない、といった眼差しだった。


「え……?」


 俺はさらにとんでも無い事実を確認することになる。


 それは、俺が陽葵を抱きしめて寝ていたということだ。


「渚沙……」

「なぎにぃ、なんで……」


 なんでだろうな、俺も分かんないよ。


 なんであのまま寝落ちしてしまったのか分からないよ。


「落ち着いて聞いてくれ、これは誤解なんだ」


 ひとまず俺は心を冷静にして皆んなを落ち着かせる。


「誤解ならまず抱きしめるのやめてよ」


 星那の指摘が突き刺さる。


 それもそのはず、あろうはずが抱きしめながら弁明を始めようとしていたのだ。


 どうやら一番落ち着いてなかったのは俺だったようだ。


 俺は陽葵を起こさないようにゆっくりと解放した後、立ち上がりみんなに言いわ…弁明する。


 みんなと言っても陽葵、陽奈、はすやすやと眠っておりついでにすず姉もぐーすか眠っている。


「まずは俺の話を聞いてくれ」


 あらかじめそう言っておく。


「やだ、陽華のことも抱きしめてくれるなら許してあげるなの」

「あ、じゃあ星那もそう言うことにしとくー」

「私もそうします」

「私もー」


 おいおいちょっと待て流石に酷く無いか?話聞いてくれよお


 心の中で嘆きながらも俺は言葉を続ける。


「その話は置いといて、まず言いわ…弁明させてくれ」

「言い訳って言っちゃってるなの」


 バレたか…


「本題入ると…」

「逃げた」


 透織…俺のライフはもうゼロよ…!!


「ただ私達のことも抱き締めればいいだけの話じゃん」

「いや、それはそうだけどなんて言うかその…」

「その?」

「は…恥ずかしいじゃん……」


 そう言うと星那がにやにやとした笑みを浮かべた。


「ふーん?渚沙恥ずかしいんだー?」

「そりゃそうだろ、歳近い異性と抱き合うなんて恥ずかしいって」

「ハグなんてみんなしてるよ?」

「それはその、恋人同士でやってるんだろ?」

「そんなに言うってことは渚沙には出来ないってことかー残念だなー?」


 あからさまな棒読みだが俺は反応しない。


「俺はそんなんじゃ靡かないぞ」

「渚沙……お願い…?」


 すると星那は作戦変更したのか上目遣いで俺を見つめてきた。


「い…1回だけなら」


 勢いでつい言ってしまった。


 我ながら幼なじみに甘すぎると思う。


 でもそれもそれでいいのかもしれない。


 ちなみに星那はぐっ、と親指を立てて透織達と喜びを分け合っていた。


 結局その後透織、星那、詠、陽華を順番に抱きしめていくという謎の時間が始まった。


 俺に抱きしめられて何がいいんだか?


 そんな僅かな疑問と多大な羞恥心と共に順番抱きしめていったのだった——

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