第9話「幼なじみと朝ごはん」

「んー、やっぱすず姉のご飯は最高だー」


 すず姉が作ってくれた味噌汁をすすりながら透織が言う。


「たしかにすず姉のご飯は美味しいよなー」


 俺もそれに同調する様に言葉を繋いだ。


「そ…そんな褒めても何も出ないぞ?」


 別に何か欲しいって訳じゃないけどな。そんなことより、


「すず姉、なんか顔赤いよ?風邪?大丈夫?」


 隣にいる少し顔が赤いすず姉が心配でおでこに手を伸ばす。


「え?なぎ…さ……」

あつっ!もしかして熱あるんじゃない?」


 おでこに手を当てると熱がこもっていた。


 念の為体温計を持ってこようとしたところで星那に静止された。


「渚沙、女の子には人には言えない熱ってのがあるんだよ」

「……あ、そういう事ね。俺無神経だった…。すず姉、ゆっくり休んでいいからね?痛み止めもあるしトイレも全然自由に使っていいからね」


 全てを察した俺はすず姉に優しく話しかけ体温計を取りに行こうとして浮かせた腰を下ろした。


「違うのに……」

「ん?なんか言った?」

「なんでもないー」


 なんか大切なことのような気がしたがすず姉がなんでもないって言ってるのだからそれ以上追及するのも野暮だろう。


「あ、そうえばこの学校来週文化祭だよね!」


 すると話の話題変えるようにふと陽葵が口を開いた。


「確かにそうだったかもな」


 1週間前なのにも関わらず曖昧なのは無期停学してたため、学校に行ってなかったからだ。


「たしか準備とか始まってるよね」


 陽葵達も学校に来たのはつい最近のことなのでこの学校の仕組みや勝手もあまり分かっていないらしい。


「でも何となく何やるかだけは知ってる」

「なにやるの??」


 俺が言うと星那は興味津々に聞いてきた。


「んー、なんか女装メイドカフェ?みたいな」

「!?!?え、もしかして渚沙も女装したりするんですか…?」


 以外にもいちばん食いついて来たのは詠だった。


「お…おう、一応な」


 正直俺の事を性犯罪者扱いしてきたクラスメイトとは一緒に文化祭を楽しんだりはしたくなかったのだがそのことに関しては事実が発覚した後、クラスメイトの1部は土下座をするくらいの勢いで謝ってきたから水に流している。


 しかもそのクラスメイトはほぼ周りで傍観していただけで直接手を出したり悪口を言ったりしていたヤツらでは無いためその1部に関しては心を許すことにしている。


「な…渚沙の女装メイド姿………女装、女装、女装、女装……」


 なんか詠がブツブツ呟いてるがそれに関しては怖いから言及するのはやめておこう。うん。


「ちなみに詠のとこは何やるんだ?」


 俺の事ばかり話していてもつまらないだろうから詠に話題を振ってみた。


「無難にお化け屋敷です。実は私もお化けとして出るんですよー」


 詠は可愛らしく手を前に出してお化けのポーズを取っている。


「こんな可愛いお化けに驚かされるのかー」

「え…?それってどういう…」

「怖くなさそ」

「乙女の純情で遊ばないでくださいーっ!」


 すると詠は頬を膨らませてぷんぷんと怒っている。


 その様子がおかしくてみんなで笑い声をあげると怒っていた詠もだんだんと一緒になって笑い始めた。


 そんな幸せな時間ときを忘れないように俺はしっかりと胸に刻みこんでおいた。


 ちなみに陽菜と透織は終始不満そうな顔をしていたりしていなかったり……?





〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 透織と陽菜はまだ中学生ですからねぇ…?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る