第10話「まだ早い(高見沢詠side)」
「詠ちゃーん!先行ってるねー!」
そう声をかけてくれた友人はお化け屋敷製作に必要な資材集めのために段ボールを探しに行った。
「はい!あとから追いかけますー!」
少し遠くにいる友人達に声を張って伝えると友人達は手を振って答えてくれた。
「さてと、早速見に行きますか」
友人達にはトイレをしてから行く、と伝えたが本当の目的は渚沙の女装メイド姿が見たかっただけ。
イケメンの男の子が女装して頬を赤らめてそっぽを向く姿……想像しただけで興ふ…ワクワクしますね。
一応言っておきますが断じて腐女子とかいうわけではありません。少し嗜む程度です。
そんなことを考えているとどうやら渚沙の教室の前に着いたようだ。
女装した渚沙の姿がないか教室を覗き込んで見たけどどうやら渚沙はいない。
「いなかったですか…」
まだ諦め切れず教室内をもう一度見渡してみることにした。
「ん〜、やっぱりいないですね……」
「誰か探してるのか?」
「ふひゃっ!!」
私が独り
「あっはは、どんな声出してるんだよ」
声を聞く限りどうやらその声の主は私が探していた渚沙だ。
「お…驚かさないでくださいよぉ」
私はそう言って後ろを振り向いた。
「っ!?」
するとそこには懐っこい笑みを浮かべ、髪をツインテールで結いメイド姿をしている渚沙がいた。
「どうだ?結構似合ってるだろ」
思った100倍可愛いです…
「あ…、えと、か…可愛いですね…?」
「なんか引いてないか?」
いや、引いてはないんですよ。逆に可愛すぎて興ふn…関心してるんですよ。
「いや、すごいなぁと思ったので」
「具体的にどこが?」
「そこまで可愛くなるのか、と思ったのと胸に入ってる名前の刺繍ですね」
私はそう言って胸に縫われていた可愛らしい胸の刺繍を指差した。
「お!まじ?俺ここ結構力入れてやったからそう言って貰えて嬉しーわ!」
渚沙はそう言って無邪気に喜んだ。
正直渚沙が裁縫が出来たことに驚いた。
「ふふ、よっぽど頑張ったんですね」
そう言って私はポンポンと頭を撫でた。
「ばっ…ちょ、さすがに…」
「どうしたんですか?後輩に頭撫でられるのがそんなに恥ずかしいんですか?幼なじみの仲なのに?」
可愛らしい渚沙をみて少しからかってみたくなった。
「み…みんなみてるしさぁ…」
「ふふっ、やっぱり渚沙は可愛いですね」
私がそう言うと渚沙は顔を真っ赤にして慌てふためいている。
そういうところがずるいんですよ…
でもそれを言うのは心の中だけに留めておいた。
それを口にしてしまったら、私が自分の気持ちを認めてしまうかもしれないから。
その感情に、名前をつけてしまうかもしれないから。
今の私ではその感情を名乗ることすら許されない。
もっともっと綺麗になって、可愛くなって、渚沙に釣り合う女性にならなきゃいけない。
だから——
この感情に名前をつけるには、まだ早い。
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