第11話「友達」
「なあ渚沙、文化祭の時やっぱ幼なじみ達と回るのかー?」
前の席の
「多分そうなるだろうなー」
煌希はうちの高校の野球部に所属しており、俺が信用しているうちの一人だ。
うちの高校の野球部は、超が付くほどの強豪校のためその分礼儀や常識というものがしっかりしている。
その野球部の方針のおかげか、野球部の人達は直接手を出すことはもちろん、陰口さえも一切言わなかったのだ。
ましてや事が全て明らかになったあと野球部の人達は何も悪くないのに全員が頭を下げに来た。
正直こんな行動はみんながみんなできる訳じゃない。
実際謝りに来たヤツらなんて本当に極わずかだけだ。
だから俺は野球部の人達を信用しており、心から応援もしている。
「なー、文化祭3日あるうちの一日だけ俺らと回んね?」
煌希が指す「みんな」とは、おそらく
もちろんみんな野球部だ。
「そーだねー、1日くらいは煌希たちと回りたいと思ってたところ」
「一日目でいい?」
俺は少し悩んでから答える。
「一応星那達にも聞きたいから一旦保留で」
「りょーかい」
「ていうかちょうど文化祭あたりじゃなかった?」
「なにが?」
「地区予選決勝」
俺の言う地区予選決勝とは、いわゆる甲子園に繋がる大会の県大会の決勝のことだ。
「たしか文化祭全部終わった次の日」
「そっかー、煌希4番だろ?」
「あー、まぁ一応な」
「一応ってなんだよ一応って」
俺は笑いながら煌希にそう返す。
煌希はうちの野球部の2年生主砲としてとても注目されている。
正直うちの高校が甲子園に行くか行かないかより煌希達が活躍するかしないかの方が俺には重要なのだ。
まぁその結果勝って甲子園に行くのが1番なんだけどね。
「まぁ健太朗はいいピッチャーだし甲子園行けるよう頑張るよ」
「え、健太朗ってピッチャーだったの?」
「うん、エースだよ」
健太朗がエースだとは知らなかった…背番号貰ってるーぐらいのことは知っていたが。
「てゆうかプロ注目の2年生エースよ」
へー、それは知らなかったな。
「すげぇな…ま、俺も甲子園まで応援に行きたいから頼むぞっ?」
俺はそう言って煌希に軽くデコピンをしながら言った。
「ってえ」
そう言って顔をしかめる煌希が少し面白かった。
その笑いを我慢しようと必死に努めて俺も変な顔になってしまった。
そして互いに顔を見あった後吹き出し、お互い笑い合った。
正直今でも他の奴らとは話したくもないけど煌希達となら上手くやって行ける気がする。
今まで嫌だった学校生活に少し光が差したような、そんな気がしたんだ。
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