第8話「本当の気持ち(白波涼羽side)」
渚沙の家にお泊まりした翌日、みんなに久しぶりにすず姉の手料理が食べたいとせがまれたため仕方なく朝ごはんを作っている。
仕方なく、と言ったが本当は料理を作るのが好きでそれを他人に振る舞うのも好きだから内心は嬉しい。
だけど今はそれどころじゃなくて…
……絶対さっきのすずのキャラじゃなかったぁああああ!!
とりあえず心の中で叫んだけど決して消えることのなさそうなこのモヤモヤ。
絶対渚沙に引かれた……
そんな感情がグルグルと心の中で渦巻いて絡まっていく。
渚沙の前では元気な陽気な年上のお姉さんを演じてたのに…寝起きだと油断して素が出ちゃった…
「すず姉ご飯まだぁー?」
そんなことを考えていると居間からお腹を空かせた陽菜の声が聞こえてきた。
正直このモヤモヤに決着をつけないと美味しいご飯ができそうにない。
まずこのモヤモヤとの闘いに勝たなければ。
「ちょっと待ってねー!今闘ってるからー!」
「……え?闘…え?何と?」
「ちょっと色々あってねー」
陽菜が困惑の言葉を漏らしていたがそんなことより兎にも角にもまずは心の整理をしなければ…
まず、すずは渚沙のことが好きかどうかはっきりさせとこう。
まぁもちろん渚沙のことは好きなんだけどそれが恋愛的な意味になるとそうでは無い。………とも言い切れないかも…
実際どうなんだろう。
恋愛的な意味で好きなのかどうなのか……
そもそもの話星那ちゃんとか陽菜ちゃんとか絶対渚沙のこと好きだから第一すずの入る隙なんてないんだろうけど…
ま、まぁ小さい頃はあんなに泣き虫だった渚沙のことをすずが好きになるなんてことあるわけ無いか!……あるわけ…………
すずの頭の中に渚沙との思い出が蘇ってくる。
『すず姉、似合ってるよその服』
『すず姉ー!シンデレラ役可愛かった!』
『すず姉はやっぱり頭いいなー』
『久しぶり、すず姉』
中1の夏、少し背伸びして大人な服に身を包んでみた時、中2の文化祭で演じたすずのシンデレラ役を渚沙が見た時、高1の夏休み、渚沙が分からないと言った範囲の勉強を見てあげた時、そして、昨日の約2年ぶりの再会の時。
どんな場面でも渚沙といる時の記憶は今でも脳裏に焼き付いている。
そして、どんな場面でも渚沙は輝いて見えた。
渚沙といると心臓が高鳴ってうるさかった。
大好きな渚沙といる時間は、かげがえのない大切な想い出だ。
あぁ、やっぱりすずは渚沙のことが大好きで大好きでしょうがないんだな。
"恋"という
ただ、辛くとも楽しい時間を捨て去る覚悟はまだすずには無かった。
美味しく出来上がった朝食を届けるために居間に戻ったすずは、いつも通りの"すず姉"を演じるのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
すず姉は心の中では幼なじみのみんなのことはちゃん付けで呼んでます。それと一人称も心の中では「すず」です。
みんなとのこの関係を崩したくないと思う気持ちがすず姉に仮面をつけさせているのかもしれませんねぇ…(◦ˉ ˘ ˉ◦)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます