第13話「少女」

 いよいよ今日は待ちに待った文化祭当日!!


 初日は煌希達と回ることになっているため星那達とは別々の行動となる。


 よし、全力で楽しもう!


 そう決意して校舎内へと足を踏み入れた。


「おっす渚沙!今日は楽しもうなー!」


 後ろからうちの野球部のエースである健太郎に声をかけられた。


「おはよ!健太郎が甲子園に行って俺に会えなくて寂しくならないように今日はいっぱい構ってやらないとな」

「おい!俺は渚沙がいなくても寂しく何ないわー!」


 冗談めかして言った言葉に健太郎が反応して空気が和む。


「ははは、まぁしばらく会えなくなると思うしさ、楽しもうぜ?」

「そーだな、渚沙には今日たくさん奢ってもらうぞー!」

「おい、誰が誰に奢るって?」


 先ほどの反撃か、健太郎もふざけ返してきた。


 2人で笑い合いながら教室に入っていった。


♢♢♢


「じゃあ各自動いていいぞー」


 担任のその言葉と共に出店の準備をする人、出店を見て回ろうとする人など各々動き始めた。


「煌希ー!行こうぜ」


 俺は煌希とその周りにいた健太郎たちに声をかけた。


 そして俺たち4人は出店を回ろうと一度学校の外に出た。


「あ…あの!」


 外に出た瞬間後ろから声をかけられた。


「ん?」


 どうやら煌希達は俺が声をかけられていることに気づいていないらしく先に行ってしまった。


「渚沙くんですよね……?」


 その少女は上目遣いで尋ねてきた。


 いや、見た目は「少女」と言う表現が合っているかもしれないが、身に纏っている服はどうやらうちの学校の制服だ。


「そうだけど、何か?」


 この学校で幼なじみのみんなと煌希達以外とは極力関わりたくない。


 でもいつまでも周りと関わらずに自分のコミュニティだけを作って生きていくのも良くないとは思っている。


 実際この子だっていい子かもしれない。


 そんな思いがあるからこそ俺は少女の話にも耳を傾けることにした。


「じ…実はずっと話したいことがあったんです!」


 あぁ、そのパターンか。


 正直なことを言うと俺が無期停学から明けてから俺と関わりを持とうとしてくる女子が増えた。


 と言うか以前までは女子と関わりすらなかった。


 友達になってくれなんて言う段階を全てすっ飛ばして「ずっと前から好きでした!」なんて言う輩までいるくらいだ。


 冤罪が明けて少し細くなったからって簡単に手のひら返しをする奴らのことなど俺が好きになるわけないのに。


 それならばせめて少しでも誠意を見せて欲しいものだ。


「何かな?」


 そこで話を終えて去っていく手もあったんだがそんなに酷いことをしては冤罪とか関係なしに普通にいじめられてしまうかもしれない。


 だから俺はその後の展開は大体は予想できているがそのまま話を聞く。


「本当に、本当に申し訳ありませんでしたっっ!!」


 だけどそんな予想とは似ても似つかない行動を目の前の少女は取った。


 深々と頭を下げて俺に謝罪の言葉を述べたのだった。

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