第14話「天ヶ瀬遥葵という名の少女」

「えっと…謝ってくれる気持ちはすごい嬉しいんだけど、どうして急に?」


 俺は頭を下げる少女にそう尋ねる。


 するとその少女は頭を上げてこう言った。


「渚沙さんは覚えてないかもしれないんですけど、私実は昔あなたに助けられてて……」


 少しもじもじとしながらもその少女は話をしてくれた。


「私が中学三年生で渚沙さんが高校一年生の時に1度だけ出会ってるんです」


 つまりは俺がまだ陰キャでいじめられてた時のことか…


「私がヤクザの方たちに襲われてる時あなたが助けてくれたおかげで一命を取りとめました」


 あぁ、あの時か。


 確かいつもは通らない道をたまたま通った時に少女が誘拐されてるのを見かけて走って追いかけてやっつけた時だったっけな。


「ずっと謝りたかったのとあの時の感謝を伝えたくて……」


 へぇ、なるほどね。でもなんでこのタイミングなんだろう。


 俺は頷いて続きを促す。


「最近はずっと色々なことが立て続けに起って学校に来れてなかったんです」

「なるほどね…それで今このタイミングで」


 俺は相槌を打つ。


「やっと学校に来れたと思ったんですがまたあのヤクザの人達に狙われてて……」

「……え?」

「だから…だから助けて欲しいんですっ!」


 そう言ってその少女は頭を下げた。


「こんな面倒事に巻き込まれるのは正直嫌だと思います。本当は私もできることなら命の恩人のあなたにこんな役目をおわせたくなかった……」


 頭を下げ続けながら少女は続ける。


「でも…でもっ、頼れる人が……貴方しかいなくて……」


 するとその少女から1粒の水滴が滴り落ちた。


 少女は泣いていた。


「……分かった。俺が助けてやる」


 すると少女は大粒の涙を零した顔を上げる。


「ありがとう……ありがとうございますっ……!」


 俺もこの少女にはどうにか力になってやりたい、そう思った。


「とりあえず話の全容を聞かせてくれ」


 そう言って俺たちは人気の少ないところに移動する。


 煌希達には「少しの間離れる、ごめん」と連絡しておいた。


「じゃあ、細かい事を聞かせてくれ」


 場が整った所で俺は少女にそう言った。


「はい、まず私の名前は天ヶ瀬遥葵あまがせはると言います」


 あまがせ……なんかどっかで聞いたことあるような………


「隠してても仕方の無いことなので正直に言いますが、私はヤクザの…天ヶ瀬組の組長、

天ヶ瀬龍臣あまがせたつおみの一人娘です」


 ほぅほぅ、ヤクザね、あの有名な天ヶ瀬組ね、だから聞いた事あったのかぁ……………ちょま、え??

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