第4話「枕投げ」
「おいお前ら……」
これは菜乃華を送り届けた後家に帰って居間に繋がる扉を開けた瞬間に出た言葉だ。
なぜかお風呂も既に各自済ませていたらしいので俺がいない間に寝巻きに着替えて布団を敷いておいてね、と言って出てったはずだがまさかこんなことになるとは思っていなかった。
「いい年して何してんだよ…」
「え〜?お泊まりと言えばこれが一番楽しいんじゃん!」
「渚沙もくらえっ!!」
そう言って星那が投げつけてきたのは枕。
そう、彼女達がやっていたのは枕投げだった。
「残念、いくら投げつけられようと俺はそんな子供じみた遊び参加しないよ?」
俺はその枕を払い除けるとそのまま
♢♢♢
「ふー、いい湯だったなぁ」
俺はお風呂を出て、髪を乾かしてから一息つくように呟いた。
今日はなんか疲れたし早めに寝よっかな。
みんないるけどこればっかりはしょうがない。うん、決して逃げてるわけじゃないぞ?
そして居間に繋がる扉を開いたその刹那、俺の顔を目掛けて数多の枕が飛んできた。
一瞬のことだったので当然対処する術もなく全て顔面にヒットしてしまった。
ぽす、ぽす、ぽす、と俺の顔を経由して地に落ちた枕を拾い上げ俺は満面の笑みを浮かべる。
「ひぃっ!」
なんか怖がるような声が聞こえた気がしたが恐らく気のせいだろう。
だって俺が怖いはずないもん!
「くらえっ!」
俺はその声と共にみんな目掛けて一斉に枕を飛ばす。
「ふっふっふ、まだまだだな少年」
「そーだそーだ!こっちにはすず姉様がいるんだぞー?」
すず姉に続いて陽奈が声を上げた。
「なるほどなぁ、やれるもんならやってみろっ!」
そうして俺たちの枕投げ戦争(?)が始まったのだった———
♢♢♢
「はぁー、疲れたな」
俺は布団の上に大の字になって呟く。
「渚沙弱過ぎ」
そんな星那の言葉に俺は素早く反応する。
「いや流石に6対1は勝てないって」
そう言って俺らは笑い声を上げる。
「それにしても枕投げがこんなに楽しいもんだとは思ってなかった」
「さっき『俺はそんな子供じみた遊び参加しない』とか言ってた人誰だっけ?」
「誰だよそんなこと言ったやつー」
「君」
「記憶にないなぁ……」
そうやって誤魔化してみたが流石に通用しなかった。
「そうえば陽華は?」
辺りを見回して陽華の姿が無いことに気がついた。
「枕投げが終わった後すぐに寝てしまいましたよ」
そこに、と言って詠が指を指した先には可愛らしく丸まって寝ている陽華の姿があった。
「陽華も寝たことだしそろそろ俺たちも寝るか」
「そうだね」
「あ、寝る場所決めてる間に陽華起きたら困るから今いる布団で寝ることにするか」
そう言って周りを見ると嬉しそうな表情をしている人もいれば悲しい表情をしてる人もいた。
後者の方が多かったけど。
「悔しいけど今はそれが1番だね」
「そうだね」
そう言って星那と陽奈は顔を見合わせた。
「よく分かんないけどとりあえず電気消すね」
そうして枕投げ戦争(?)は幕を閉じた。
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