第22話「仲良し」

「渚沙」


 昼休み、星那と陽華と陽葵と話しながらご飯を食べていると後ろから呼ばれた。


 振り返るとそこには上品な佇まいの幼なじみ、高見沢詠たかみざわうたがいた。


「久しぶりですね」

「あぁ、久しぶりだな。会いたかったぞ」


 詠もこの学校に来ていることは知っていたのであまり驚きはしなかった。


 その話を聞いた時なんでこのタイミングでみんなして転校してきたのか星那に尋ねた。


『どうしてって、みんな元々渚沙の高校がどこか分かったらそこに転校するつもりで、たまたまそれがこの前分かったってだけ』


 と、呆気からんとした様子で言った。


 結局みんな俺の事を嫌ってたわけじゃなく、ただの俺の勘違いと根も葉もない噂のせいだったということだ。


「ええ、私も会いたかったです」


 詠はまるで上級貴族かのような口調で言う。


 聞くところによると詠は、社長令嬢だったらしい。


 だが親の不仲で母親と共に家を追い出され、挙句の果てには母親もさえ詠を捨てた。


 その話を聞いた時に湧き上がってきた憤りは今でも忘れない。


「それにしても可愛くなったな、詠」


 なんの躊躇もなく告げると詠にしては珍しくあたふたとし始めた。


「あ、え…あの、と…とても嬉しいじぇす……」

「あ、噛んだ」(渚沙)

「噛んだね」(星那)

「噛んだなの」(陽華)

「噛んだ…」(陽葵)


 詠以外の4人で小声で言い合う。小声と言っても多分聞こえてるけど…


「も、もう!みんなして言わなくてもいいじゃないですか!!」


 そんな俺たちにぷりぷりと怒っている詠が可愛らしい。ペットにしたいくらいだ。


「ごめんごめん、詠がそんなになってるの初めて見たからさ」


 少し笑いながら謝ると詠は、「渚沙に免じて許してあげます」といった。


 いや、俺に免じてってドユコト???


 まぁいい、考えてもわからんことはしょうがない。


「詠も、一緒に食べるだろ?」

「はい!もちろんです!」


 そう言って100万点の笑顔を咲かせるのだった。


♢♢♢


「なーぎさっ!一緒に帰ろ?」


 授業が終わった放課後、荷物を整理していると後ろから飛び乗られた。


「ごめん星那、今日は用事があるんだ」

「えー、なんでぇ」


 俺の背中の上でただをこねている星那を諭しながら準備を進める。


「星那…渚沙、困ってる」


 すると陽葵が助け舟を出してくれた。


「えー?困ってないよね、渚沙?」

「……」

「ね?そもそもわざわざうちのクラス入ってこないで」

「むむっ!そんな言い方酷くない?」

「酷くない、渚沙が可哀想」


 ギャーギャーと言い合ってるふたりを見て俺は昔を思い出す。


 そうえばこの2人いつも仲悪かったな…いや、仲がいいのか…?喧嘩するほど仲がいいって言うもんな、うん。


「まぁまぁ、2人とも落ち着いて」

「「元凶は静かにしてて」」


 …………めちゃくちゃ仲良いじゃん

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