第14話「黒幕」
結局断る理由も無かったので次の日曜日に会って話をすることになった。
「服はこの前選んだやつでいいか」
そう思い星那達と買った服に家に持ち帰ってから初めて袖を通した。
今日会うわけじゃないが、事前に1回くらいは着ときたかった。
鏡の前に立って自分を見る。
「うん、なかなかいいんじゃないか?」
やっぱり星那と透織の見立ては間違ってなかったようだ。
「ちょっと外にでも出てみよっかな」
そう思い、財布とスマホなど必要最低限のものだけ持って外に出ることにした。
♢♢♢♢
夏の日差しが燦燦と降り注ぐ。
コンビニにでも寄ろうかと思い、木陰道を1歩1歩進んでいく。
懐かしいな、この道もいつか幼なじみたちと帰り道にこっそりアイスを買って食べながら帰ったことがあったな。
そんな夏の足跡が心の中に溢れてきた。
「やっぱり、もう1回みんなで会いたいな…」
そしてまた俺は叶うはずもない夢を口にする。
「お、ついたついた」
最寄りのコンビニ、ここにも沢山の思い出が詰まっている。
だがそんな思い出の場所に似つかない輩がそこにはいた。
「時田拳聖……」
そこに居たのは俺を無期停学まで追い込んだ張本人達だった。
「あ?誰だテメェ」
ダイエットと髪を切っていたおかげか俺が七瀬渚沙だとはバレなかったようだ。
「いえ、なんでもないです。すみません」
バレていないとなればなるべく関わりたくは無かったのであまり刺激しないようにその場を通り過ぎた。
「ははっ、なんだあいつ。イケメンだからって調子乗ってんのか?やっちゃいます?"皇成"さん」
…が、"皇成"、その名前に俺は足を止めた。
「こいつが…」
この前の奴らもこいつの名前を口にしていた。
きっと恐らくこいつが俺が通う
これだけの不良に慕われているこいつがどれだけ強いのか実力は未知数のため、今仕掛けるにはあまりに危険すぎる。
しかもまたこの前みたいなことになりかねない。
だから俺は今回はそいつの顔をじっくりと覚え、見逃すことにした。
周りを固めればああいう奴らは簡単に捕まえられる。
それまでの辛抱だ、そう言い聞かせ今回は目を瞑ったのだった。
♢♢♢♢
コンビニで懐かしのアイスを買った後、俺は家に戻ってきてた。
「時田拳聖、皇成……鳳玖学園を堕とした黒幕……」
はぁ、とため息をつく。
「みんなが安全に学校生活を送るためにもいち早く方を付けなきゃな」
奴らを逃げ場のないところまで追い込むにはどうすればいいか、と考えているとピンポンとチャイムがなった。
時間帯はちょうど学校が終わり1時間がたった頃。
誰だろう、そう思いながら音声通話で「いまいきまーす」と言ってから玄関に向かった。
扉を開けるとそこには星那がいた。
仕事は無いのか?何しに来たんだ?などなどたくさんの疑問が浮かんだが、それらを軽く覆う程の大きな疑問があった。
「星那…なんでうちの学校の制服を着てるんだ……」
それは、かの大人気声優が鳳玖学園の制服を着ていたことだった————
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