第11話「"星那"の日常へ…」
「な…ぎさ…なん……で」
「なーんか最近様子がおかしかったからな、ついてきてみたら案の定ってわけ」
渚沙は私の上に乗っている彼を睨んだ。
「ま、俺が来たからもう大丈夫だよ」
そう言って私の
そんな言葉をかけてもらっただけで全てが救われた気がする。
あぁ、私はどうしようもないくらい渚沙のことが好きだ。
この思いは決して渚沙には届くことは無いだろうか…
「助けに来てくれた感動シーンをやるのはいいんだけどさ、いま俺が楽しんでる最中なんだから水刺すのやめてくんね?」
私の上に馬乗りになったままそいつは言った。
「お前自分で何してんのかわかってんのか?」
「あぁ分かってるよ」
「じゃあなんでそんなことしてんだよ」
「楽しいから」
そう言うとニヤリとまとわりつくような気持ちの悪い笑みを浮かべた。
「飛んだクソ野郎だな…」
「ふふふ、クソ野郎で結構。おいお前ら、やっちゃって」
すると周りにいた奴らは渚沙に向かって攻撃を始めた。
「ねぇ…ちょっと!!渚沙は……関係ないじゃん!!」
「あ?どの口が誰に物言ってんだ?」
私が咄嗟に出した声は、そいつの一言によって威勢を失ってしまった。
「こんな人数差じゃあいつもすぐやられるからそうなったらお楽しみの時間だな」
そうだった…こいつはそういう奴だった。
自分の私利私欲のためなら他人の犠牲はいとわない。
渚沙だって、どんな目に遭うか分からない……
ドゴッッ!!ボガッッ!!
「あ?」
「え…な…渚沙……?」
なんと渚沙は、5人以上いた相手を倒していた。
「お前正気かよ、それはここまでしてすることかよ」
「あ?お前に何がわかるんだよ」
「お前の気持ちは1ミリたりともわかんねぇ」
「じゃあしゃしゃってくんなよ」
「でもな、俺は人を傷つける奴らは絶対許さねぇ」
そう、渚沙は心に芯を持って告げた。
「ほう、小6にしては大層な理念を持ってんじゃねぇか」
「お前も小6にしてはクソみたいな心もってるな」
それは私にはついていけないほど大人な会話に見えた。
「その大層な理念ぶち壊してやるよ」
そう言うと私の上から避けて、ポキポキと指を鳴らしながら渚沙に向かって歩き始いていった。
「こいよ」
渚沙がそう言った瞬間、2人の喧嘩が始まった。
だがそれは喧嘩と呼ぶには少し激しすぎた。
互いに、とても12歳の小学生にはできるような動きではなかった。
私の目ではとても追えず、ただ呆然と見つめていることしか出来なかった。
でも私は震える体に鞭を打って、近くにいる大人に助けを求めに行くことにした。
「…だれかっ!!たすけて…幼なじみを、助けてくださいっ!!」
近くには誰も居なかった。
それもそのはず、ここは無人になった工場跡地だったから。
もう何分そうしていただろうか。
私が叫び疲れ諦めかけていた時、後ろからとんと方を叩かれた。
「星那、もういいよ。ありがとう」
そこにはボロボロになった渚沙の姿があった。
「な…渚沙……」
私は渚沙の姿を確認するなり溢れる涙を抑えきれなかった。
「ヒグッ…なぎさっ……わだじ…しんばいしたんだよぉ…!!」
周りも気にせず私はただ泣き叫んだ。
「うん…心配させてごめんね」
渚沙は申し訳なさそうに謝ってきた。
「なぎざぁあ、こわがっだよぉぉお!」
「うん…すぐ気づけなくてごめんね」
そうやって渚沙は優しい言葉をかけながら私が泣き止むのを待ってくれた。
♦︎♢♢♦︎
「星那はけがなかった?」
「…うん」
私が一通り泣き終えたあと、私たちは帰路に就いていた。
「よかった…また何かあったら今度はすぐ絶対俺に言ってね?」
「うん」
私たちの間に少しの間沈黙が流れる。
そこで意を決して私は渚沙の2歩前に回り込んだ。
「渚沙!私の事助けてくれて、ほんとにありがと!」
今できる自分の中で満点の笑顔をして渚沙を見つめた。
「かわいいな……」
そこで渚沙は何かを呟いた。
「え?なんて?」
「いや、なんでもない」
私がそう聞くと何故か渚沙は顔を真っ赤にして目を逸らした。
そんなことされたら逆に気になるじゃん!
「なんでー?教えてよ〜」
「無理だ、これだけは本当に……」
「え〜?教えてよ」
「そ、そんなことより星那って一人称私だったっけ?前までは星那が一人称じゃなかったか?確かそうだよな…うん、」
明らかに動揺して早口になってる。
動揺してる渚沙可愛すぎる……
「もー、明らかに話逸らしちゃって」
「俺は星那が一人称の時の方が好きだったな」
「……渚沙のばか」
好きとかいう言葉を簡単に使ってしまう渚沙に不服の言葉が漏れてしまった。
「え、なんで今俺ばかっていわれたの…?」
「知らな〜い、ささ、帰ろ帰ろ〜!」
♦︎♦︎♦︎♦︎♦︎
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