第12話
馬車に揺られること数分……。
私は、ツクヨミ様の実家に来ていた。実家と言ったら聞こえはいいが、ツクヨミ様は第一王子であるため、実家というのは王城を指す言葉でありまして……。
「こ、ここ、国王様がな、なな、なぜ私なんかと謁見を!?」
「新たな精霊王の誕生なのだ。今夜は貴族が祝いに来るぞ」
「え゛」
「昼に来たのはその前祝いみたいなものだな」
そうなんですか!?
国の紋章が付いた馬車が王城の中に入っていく。緊張してきたー……。王城の中を案内される。
今宵は満月。満月は精霊の力が強まる日。普通の人にも視認できるくらいの力は持つようになるらしい。シルフ談。
ドクンドクンと強く鼓動する心臓。それは緊張していたが故だった。
「ぶ、ぶぶ、無礼なことをしたら死刑とかないですよね……?」
「あるわけないだろう……。俺の父がそんな暴君だったら俺はすでに反乱を起こしてる……」
「で、ですよねぇー」
「だが……あまりいい父親ともいえんな」
「え」
ツクヨミ様は父親に不信感が少しある様子。
私はまず国王様がいる玉座の間に案内された。玉座には国王様が座っていて、優しそうな笑顔を浮かべている。
「よく来たね。精霊王様」
「精霊王様だなんて……」
「謙遜などするな。ふふ……」
国王様は笑顔を浮かべる。
が、その笑顔は精霊王が生まれたことに対する笑顔ではない気がした。直感が鍛え上げられたからなんとなくわかってしまう。
この国王様はなんか危険だと。ツクヨミ様には感じない邪気のようなものを感じる。
私の脳内で危険信号が出ていた。
だけれど、それを口に出してしまうと国王様に対して失礼ではないだろうかという話もあった。
ツクヨミ様が父親に抱いていた不信感。なんとなくわかる気がした。
「…………」
「父上、アシュリーは体調が悪そうなのでこの辺でいいでしょうか」
「ふむ、いいだろう。すまなかった」
「い、いえ……」
私は玉座の間から出て、国王様に聞かれない場所に行こうとツクヨミ様を促した。ツクヨミ様は何が言いたいのかすでに分かった様子で。
ツクヨミ様の自室に入り、私の力で決壊魔法を張って声を漏らさないようにする。
「父上を見てどう思った? アシュリー」
「えと……。ちょっと嫌な気配が……」
「そうか……。アイリス、ちょっと厳しくなるな」
「ええ……。でも、前みたいなことにはさせないわ」
「なんか危険です……。私としてはあまり近づきたくないくらいには嫌です……」
「そこまでか……。となると、早急に手を打つ必要があるな」
「初めてです。こんなに人に対して恐怖を抱いたのは……」
ちょっと震えてしまった。
あの国王様は危険だと告げている私の本能。多分きっと正しい。何を考えてるかはわからないけれど、それでも嫌な気配だ。
シルフも同じ気持ちなのか、今すぐあの国王を殺さなくてはと囁いている。
「国王様……。きっと精霊が嫌い、です、よ、ね」
「わかるのか」
「精霊王となって……。感覚が研ぎ澄まされたので人の気持ちの機敏もなんとなく察知はできるんです……。あの視線はどうも好意的なものではなかった……。むしろ憎しみのようなものを感じました」
「チッ……。時間の問題だな」
「それと……国王様はアイリス様に対しても憎悪の目を向けていた気がします」
「それもわかるのね」
一体なんでこんなに憎悪の視線を向けられなくちゃならないんだ。
何か理由があるはず。精霊が嫌いである理由は何なのかは知らないけど……。
「このまま何も知らないままでいい……ってわけにもいかないか」
「そうね。話せるところは話しましょう」
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