第27話

 場所を移し、誰もいないグラウンドに立つ。

 私は魔法の使い方を指南した。私も精霊王となったからか、魔法はありとあらゆる魔法を使うことができる。

 やり方もなんとなくはわかっていた。


「まずは精霊にやってほしいことを想像してください。それを想像したまま、魔力を出すんです」


 そういって、教えていくと。

 数分後にはすでに使いこなしていた。精霊が力を貸し、私めがけて魔法を放ってくる。

 私はそれを防ぎ、魔法を連発。だが、バリアを覚えたのか魔力の障壁を張り私の魔法が防がれた。そして、一気に距離を詰められ私に馬乗りになる。戦闘センスがありすぎる……。


「もう使いこなしたんですか」

「ああ、魔法っていいな! だけどちょっと頭がふらつくぞ」

「魔力が切れかけてるんです。もう魔法は撃たないほうがいいと思います。毎日なくなるぐらいまで使っていくと魔力が増えますよ」

「そうか。よし、じゃ、毎日魔法の練習するか!」


 予鈴が鳴り響く。

 昼の休憩時間も終わり、私たちは教室へ戻る。

 そして放課後を迎えた。私は帰ろうとすると、フラワーさんが教室の外で待機していた。私はフラワーさんと一緒に帰ることにする。

 帰るって言っても寮なんだけど……。


「そういやさぁ、最近町のほうで不審者出るみたいだぜ?」

「不審者ですか?」

「ああ。なんか知らねえけど、孤児院を訪ねては子供を見繕ってるみたいでよ。アシュリーがいた孤児院にも出たそうだ」

「……ちょっと心配です」

「だろ? 見に行ってみるか?」

「はい」


 不審者の目的はよくわからないけど、私は自分がいた孤児院に向かうことにした。

 王都には孤児院は3つある。北のほうにあるホクト孤児院、東のほうにあるイスト孤児院、西にあるウェスト孤児院。

 私はイスト孤児院のほうで過ごしていた。王都は広いから孤児院もたくさんある。孤児もたくさんいるから孤児院の仕事はなくならない。


 孤児院は教会の役割も兼ねていて、ゾロアスチー教と呼ばれる宗教の教会でもあった。

 私はフラワーさんと一緒にイスト孤児院にやってきた。


「院長!」

「おや、アシュリーさん。どうかなさったのですか?」

「いや、この孤児院に不審者が出たと聞きまして……。心配で……」

「ふふ、さすがは最年長。心配で来たわけですか。でも心配ないです。ただ……」

「ただ?」

「ウェスト、ホクトの孤児院で孤児が行方不明になる事件が相次いでいるんです。私のところはまだ行方不明の子供はいませんが……」

「……本当?」

「はい。私らとしては何者かによる誘拐事件の線が濃厚かと」

「だろうな。報告の人数は7人。多すぎるぜ」

「いえ……つい昨日にも1人行方不明になったそうです」


 それもう誘拐だよね?

 何のために誘拐をしているんだろうか。イスト孤児院はまだ被害がいないそうだけど、ここでも行方不明が出るのも時間の問題じゃないだろうか。


「どこかで孤児のまとめ売りでもしてんのか?」

「奴隷ってことですか……?」

「考えたくはねえけどな。そういうのもあるとは聞いた。騎士団のやつらも調査中らしいしな。詳しい話は知らん」

「奴隷……」

「奴隷制度はこの国にはねえ。違法だが、そういうのを楽しむのも貴族とかに一定数いるんだよ。そういうやつらに売られたりすることもある」

「……」

「孤児は身寄りがねえから面倒がすくねえ。だから狙われやすい」


 じゃあ、その不審者は奴隷商人とか人攫いの線が濃厚なのかな。

 止めないと……。


「院長、とりあえずお前も容疑者だからな」

「わかっております。イスト孤児院だけが被害がないっていうのもおかしいですものね」

「わかってんじゃねえか。とりあえずあたしも調べてみるよ。何かわかったら報告に来る」

「わかりました。いい報告をお待ちしております」


 私たちは孤児院を後にする。

 誘拐……。心配だ……。





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