第28話
孤児たちの誘拐事件のことが頭をよぎり続けて、授業とかにも全然身が入らない。
行方不明になった子供たち……。イスト孤児院も時間の問題。誰がやったかなんて言う証拠は出てきてなく、今のところあるのは不審者の目撃情報のみ……。
孤児しか狙われていないというのも妙な話でもある……。
「どうしたのアシュリーちゃん。上の空だけど」
「フレズベルグ様……」
「どうした? アシュリー」
「いえ、その……孤児の誘拐事件のことが心配で」
「そのことか」
「……面白そうな事件だね!」
やはりツクヨミ様はこのことを知っている。そりゃそうか。王子だから知らないわけもない。報告も来るだろうし。
フレズベルグ様はノリノリで首を突っ込むつもりでいるし。
「で、誘拐事件の詳細は?」
「えと、ホクト孤児院、ウェスト孤児院の孤児たちが行方不明になってるんです。結構な数が。私がいた孤児院の院長が言うに、多分誘拐されたのだと……」
「へぇ。ちなみに人数は?」
「7人……いや、8人消えたそうです」
「ほほう。一人とかなら事故とかの可能性もあったけど、8人とは。たしかに誘拐だね。で、犯人につながる証拠は?」
「不審者の目撃情報くらいしかないです……」
「んー、お手上げ!」
諦めるの早い。
「第一、孤児を誘拐して何がしたいわけ? 親いねえんだから身代金とか要求できねえし」
「フラワーさん曰く……奴隷にされたかもと」
「奴隷? この国では違法だろ? 俺の国では合法だけど……俺の国は犯罪奴隷だけだぜ?」
「ああ。違法だ。だが……そういうことを楽しむ貴族とかいるんだよ。厄介なことにな。裏稼業みたいにやられてる。証拠がないから押し入れないんだ」
「裏でやられて証拠がないのね……。そりゃどうしようもない。っていうか知ってるんならそれで入ればいいのに」
「そうもいかん。私も噂程度でしか聞いたことがないからな。噂程度で踏み入って違いましたってなったらそれこそ国の信頼関係も揺らぐ」
「難しいなぁ」
奴隷問題に誘拐。関わってないというのも少しおかしい気がする。
奴隷はこの国では違法で、後ろめたいもの。身寄りがあると親とかいろいろ調べに来る可能性があって都合が悪いのなら、身寄りのない子供を……。
「ん?」
私は変な魔力を感じた。
結構遠くからだ。王都の中央部分から変な魔力を感じた。その魔力は一瞬だったがすぐに収まる。
精霊たちも何か騒ぎ出している。魔力に気づいたんだろうけど、嫌な魔力だからだろうか。
「どうした?」
「王都の中心部から嫌な魔力を感じたというか……」
「嫌な魔力?」
「気のせいかもしれません。精霊たちも騒いでますけど……。一瞬だったので思い違いかも」
「確かめに行こう! そうしよう!」
フレズベルグさんはノリノリだった。
「仮にも一国の皇子が危ないであろう場所に行こうとするな!」
「えーーーー!」
「その変な魔力の場所、行ってみよう。パルテシオに声をかけるか。あいつは強いしな」
「俺がダメならツクヨミもダメだろー!」
「……俺は一応代わりがいるからな」
「えー、俺あの弟が王になってほしくねえし、ツクヨミはなおさら死んじゃダメだろ。俺も行く」
「……はぁ。好きにしろ」
その変な魔力……。何か嫌な予感がする。
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