第29話
ツクヨミ様、フレズベルグ様、ドリトンさん、フラワーさんを連れて私は変な魔力を感じ取った場所に向かう。
大まかな場所しかわからない……。ここら辺からしたのだが、それ以上は何もわからなかった。
「すいません、ここ周辺ということしかわかりません……」
「構わねえよ。怪しい建物をしらみつぶしに探してきゃいいだろ」
「いや、普通にあそこだろ」
と、フレズベルグ様が指さしたところ。
地面にうっすら血の跡があった。何の変哲もない建物だけど、たしかに魔力がちょっと濃い……のかな。
私たちは建物の前に立つ。
「アシュリー。俺はなんとしてもお前をこの身を賭してでも守ってやるから」
「あ、ありがとうございます?」
ドリトンさんが力強く言ってくれた。守ってくれるのは嬉しい……。
フレズベルグ様は躊躇なく扉を開けた。
「こんちはーっす! 何してるんすか……」
と、フレズベルグ様が中を開けた瞬間、人が飛んできた。
「おわっ!」
「ビンゴだ」
人を投げ飛ばしたのは目の前の男のようだ。
知らない男だ……。だがしかし、投げ飛ばされた男は知っている。
「院長!?」
「アシュリーさん……」
「院長、なんでここに!?」
「ここに……子供が……」
「今治します!」
私は回復魔法を院長にかけた。
院長の傷は回復し、呼吸も落ち着いてくる。だが、気絶してしまったようで私は寝かせておくことにした。
「お前、何のつもりだ」
「チッ……。意外と嗅ぎつけるのが早いこって。ただ……こんなガキどもか。騎士たちはまだ……か」
「おい、ごちゃごちゃいいだろ。どうせ戦るんだろ? 早くやろうぜ……?」
フラワーさんは剣を構えていた。
「はーっはっは! いいだろう! かかれ者ども!」
と、号令が飛んだ瞬間、物陰に隠れていた相手の仲間が襲い掛かってきた。ツクヨミ様はフラワーさんに殺すなという命令だけを告げて、暴れさせていた。
「フレズベルグ! まずはこの院長を安全な場所に……。いいや、俺が行く!」
「ごめんね方向音痴! ま、俺も沈静手伝うよ。要は殺さなきゃいいんだろ? 全員」
「ああ」
「オッケー! 殺さない程度に皆殺しじゃあ!」
「どっちだよフレズベルグ! とりあえず、俺らでこの暴漢は何とかしなくちゃな」
どっちだ。
私はとりあえず自分の身を守ることを考えよう。いや、私は子供が連れて行かれたであろう場所を探して……。
と思ったが、地下につながっている通路が見えた。私はごたごたのうちにその中を調査してみることにする。
上では二人が暴漢たちの対処をしている。危なくなったら逃げればいい。それに、地下から助けてという声が聞こえる。
下に降りていくと、今まで誘拐されたであろう子供たちが培養液の中に入れられていた。そして、その近くには人が立っている。
「上が騒がしいと思ったら……ばれてるのかい」
「……なにするつもりですか」
「何って……精霊の研究だよ」
「精霊の……研究?」
「ほら、精霊ってさ、愛し子にしか見えないだろ? 愛し子しかその力を十分に発揮できないわけ。愛し子は先天性……。それって不公平だろ」
「……要するに後天的に精霊をみえるようにさせる研究?」
「そう! 子供のくせに話が早い! 相当賢いね!」
「そんなの……」
できるわけがない。
精霊の愛し子の理屈は精霊王の素質があるから愛し子になる。私がそうだから。私は現に精霊王となったわけで、精霊の愛し子は後天的にできるわけがない。
視認することだけならできるかもしれないけど、そうするんだったら多分というか、人間に負荷がものすごくかかりすぎる。精霊の力は人間の創造を越えてるから……。
「できるわけがないっていうのか? そんなの誰が決めた? 誰が言った。物はやってみないとわからないんだよ。何事も。机上の空論で終わらせるのはつまらんだろ」
「できない。私が言うんですから絶対です。精霊の力をなめすぎです」
「そうかなぁ!? ま、やってみなくちゃわからないよね! 理論としては大量の魔力を流し込んだら見えるようになるんじゃないかってことなんだけど。どうだろうね?」
「そんなことしたら人間壊れる……!」
「いいや、私の理論だと壊れないよ。そーれ! 今まで魔力を貯めていたが、ついにマックスだ! 精霊の愛し子の完成だァ!」
そうやって何かの装置のボタンを押した。
その瞬間、どこかに溜められていたであろう嫌な魔力が子どもたちに注がれていくのがわかる。
私は魔法をうって何個か止めたが、それでも5人には魔力が注入されてしまった。
「さて、変化は……」
その瞬間、男の顔が吹っ飛ばされた。
ガラスを突き破り、過剰な魔力の注入が行われた子供たちの肉体が暴走している。体が膨れ上がり、自我を失っていた。
これもう人間じゃない……! 魔物だ……。私は魔法を放つ。
「シルフ! 一緒に戦ってくれる!?」
『いいけどこれどうすんの!? こういう状態になったら治せないわよ!?』
「殺すしかない……と思う」
『そうね。助ける余裕はないわ』
だが。
相手は5人。一人で対応するのは難しい。私は周囲の精霊を呼び寄せる。そして、精霊に命令を下した。
「目の前の魔物5人を殺して!」
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