第30話

 精霊たちは躍起となって魔物に襲い掛かる。


「小さい人間……ウザ」


 と、大きな腕を大きく振り薙ぎ払う。


「見えてるし触れられる……!? 理論はちょっとは正しかったのかな……」


 過剰な魔力を注入すると精霊が見えるようになる。

 精霊の力が増すというより、精霊の力を視認できるような人間離れした力を手に入れるって感じなのかな。

  すると、魔物の5人は大きく飛び、天井を突き破った。


「上にはあの二人が!?」


 私は急いで上に戻ると。

 頭から血を流しているフラワーさんと、息を切らしているフレズベルグ様がいた。


「アシュリー! 何なんだあれは!」

「あれは誘拐された5人の子供なんですけど……」

「けど?」

「過剰な魔力を注入されて魔物化してしまったんです! もう自我はないし治せないんです」

「じゃあ殺すしかないってことかよ!」

「はい……」

「わかった。子供たちよ、悪いな」


 フラワーさんは一気に距離を詰め、剣を思い切り振り下ろす。

 子供の腕が飛び、赤色の液体が降りかかる。私は嫌な予感がして、背後から死なない程度に魔法を放ちフラワーさんを吹っ飛ばす。


「何すんだアシュリー!」

「その血は多分被っちゃダメです! 魔力が強すぎて人間に有毒です……。私なら多分大丈夫ですが、普通の人間が触れたら多分ダメかと……」

「まじんかー! わかった!」


 血にも大量の魔力が含まれている。

 この血だけでも人間が保有できる魔力量をゆうに越している。どれだけ魔力が注入されたんだ。

 こんな大量の魔力……。人間にとって有毒でしかない。器が壊れるのも当然だ。


「地肌で触れちゃダメってだけ? 靴とかは?」

「何かを介して触れる程度なら大丈夫です! ただ、布とか血がしみこむようなもので触れたら血に触れることになるので駄目だと思います……」

「オッケー! 靴で踏むのはOKね?」

「踏むのはありですが、血をかぶったらだめです!」

「誘拐した子供をこんな極悪非道なことに……」


 ほかの人たちは全員伸びているようだったが、魔物が暴れて首を踏み潰される者、つかまれてぶん投げられる人がいる。

 残酷な現場だった。それほどまで力が強いのだ。


「建物ん中は狭くてやりづれえな! まずは一人!」


 ドリトンさんが魔物を一刀両断していた。


「こっちも終わるぜぃ!」


 フラワーさんが剣を薙ぎ払い、切り裂く。

 それと同時に、フレズベルグ様も一人殺し終えたようだった。あと残り二人……。私はちょっと強力な魔法を放つ。

 私の魔法を受け止める魔物。が、耐えきれなかったのか頭が吹っ飛んだ。


「もともと人だろ? 気分悪いなー。ちょっとムカつくね」

「……元に戻せねえってアシュリーが言ってんだから戻す方法もねえんだろ。ま、気分悪いのは同意だが」

「さて、残り一人。で、ここで問題発生。血をかぶっちまった」

「えっ」

「本当に気分悪いわ……。ちょっとあたしダウン」

 

 フラワーさんがその場に倒れる。

 血をかぶってしまったらしい。私はフラワーさんに駆け寄る。


「精霊さん、フラワーさんの魔力を吸い取ってあげて!」

『あいあいさー!』

『死なせないーーーー』

「ドリトンさん、フレズベルグ様! フラワーさんを安全な場所に運んでください! おんぶしたらダメです! 血に触れたらダメですから! 安全に二人がかりでお願いします!」

「わかった。だが、お前ひとりで相手するのか?」

「相手します! 私は力があまりないので運ぶ自信がないので相手取るのは私が最適だと思います……」

「そうだね。よし、ドリトンは腕を持ってね。俺脚もつから」

「わかった。せーのでいくぞ」


 二人はフラワーさんを運んでいく。

 フラワーさんは精霊に任せて、私は目の前の魔物を殺さなくちゃいけない。もともと孤児。もともと人間。罪悪感はあるけど……。


「ごめんね」


 私はさっきより強めの魔法を放ち、体を吹き飛ばしたのだった。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る