第26話
「お、お前が精霊の愛し子……もとい精霊王だな?」
と、制服を改造し、へそを出している女性が話しかけてきた。
すごい豪快そうな……っていうか誰だろう。
「おっと、誰だって顔だ。あたしはフラワー・パルテシオ。パルテシオ公爵家は知ってるだろ? そこの娘だ」
「パルテシオ……」
「精霊王様に挨拶をしようと思っていてね。ようやく遠征から帰ってきたところさ。挨拶が遅くなって悪いな」
「い、いえ……。私は平民ですし……」
「平民でも精霊王だろ? 母さんは精霊王を尊敬してんだ。あたしも尊敬してんだよ。あたしが公爵家だからって態度とか変えなくていいぜ。あたしもこんなんだからな」
笑顔で語るフラワー様。
豪快な笑顔には裏がないと感じた。実際、シルフもこの人いい人そうと呟いていた。
「よっしゃ! 知り合った記念としてよォ、一緒に学食食べようぜ」
「は、はい!」
「あたしのシェフの腕前見せてやるよ」
というので、私はフラワーさんについていく。
フラワーさんには特別に席が用意されていた。というか、本来は公爵家の人たちとかにはそういった特別席が合ったりもする。国王の次にえらい立場の人だし、ツクヨミ様とかにもそういう席はあるらしいけど私は見たことない。お二方がそこで食事をとっているのは。
「パルテシオの領はさ、料理人がすげー多いんだ」
「そうなんですか?」
「ああ。温泉地とかいろいろ観光スポットがあるから料理も提供することが多いからよー、料理人の数も多くなったんだ」
「へぇ、温泉地……」
「興味あるか? じゃあ、夏休みあたしの領に来なよ。案内してやるからさ!」
「いいんですか?」
「構わん構わん!」
温泉かぁ。結構楽しみだなぁ。
温かいお風呂に浸かるときが一番何も考えずに済むんだ。ゆったりとしてて心地のいい空間があって……。
「あら、何のお話をしているのかしら」
「アイリスか」
「ごきげんよう、フラワー様。隣よろしくて?」
「おう。構わねえぜ」
そういってアイリス様が私の隣に座ってきた。
「何の話をしていたのですか?」
「ん? ああ、今度、夏に大きな休みがあるだろ? そん時にあたしの領地に来ねえかっていう話だ」
「パルテシオ領ですか。美肌にいい温泉があるとか……。私もものすごく興味があるんですが、私もお邪魔しても?」
「おう、いいぜ。ドルムンク公爵家も親精霊派だもんなぁ。かっこよくいえば同志ってことだ。仲良くしようぜ!」
「そうね。仲良く致しましょう」
アイリス様がうふふと笑い、フラワーさんが豪快に笑う。
すると、私の目の前に料理が運ばれてきた。魚の蒸し料理のようだった。魚はふわっふわで、特製ソースがかけられているようだ。
精霊が出てきてソースをなめる。
『うまっ!』
「え、そんなに美味しい?」
『ソースだけでもうまっ!』
というので、私は魚をソースに絡ませて食べてみる。
柑橘系のソースだが、ソース自体がものすごくうまい。魚のたんぱく的な旨味を邪魔するどころか、ソースが魚の旨さを高めているというか。
こんな料理初めてだ。
「美味しい!」
「だろー? あたしの家の料理人は超料理がうまいんだ。あたしの誇れる自慢だな」
「食べたことないですよこんな魚料理! 無限に行けそうっていうか……」
「病みつきになるだろ」
と、嬉しそうに笑うフラワーさん。
私がおいしいと騒ぎまくったからなのか、周りの精霊がなになに?と私の周りにいつの間にか集まっていた。
「うわ、すごい精霊の数」
「精霊? 今いるの?」
「います。ものすごくいます。私がおいしいっていったからみんな興味を持って近づいてきたみたいで……」
すると、フラワーさんの食べていた魚が突如宙に浮く。
「お、浮いた」
「……精霊の仕業ですか?」
「はい」
精霊が無断で料理を食べているようだった。みんなに分け与えてパクパク食べている。
「すいません、精霊が……」
「構わねえよ。それより精霊に味はどうだって聞いてみてくれ」
「みんな、味はどう?」
と聞くと、みんな美味いーーー!って叫んでいた。
「美味しいだそうです」
「ははは、そうか! ならたーんと食えよ! あたしは見えてねえからどんな感情なのかわからねえけどよ!」
いい人だな、フラワーさん。
すると、精霊が数匹フラワーさんの周りを飛び回る。
「フラワーさんに精霊が数匹懐いたみたいですよ」
「マジ!? あたしにか!?」
「美味しい料理提供してくれると思ってるんでしょうか……」
「そうか! それなら提供してやるぜ? っと、ん? この飛んでる小さい光みたいなのが精霊か?」
「……見えてるんですか?」
「今見えるようになったんだが」
精霊たちが自分で見えるようにした?
どんだけ懐かれてるんだこの人。精霊が見える条件は私の間近にいることとかはあるが、結局は精霊の力次第だ。
私の力を借りて間近にいる人は見えるようにもなる。が、精霊王になってからその範囲は少し狭くなっていたから近くにいるアイリス様も見えなくなっているのに。
「精霊がものすごく懐いたのか、自分から姿を見せるようにしたんだと思います。精霊はシャイなので私以外には姿を見せたがらないんですが……」
「そうなのか! お前らあたしのことが好きなんだなー!」
「ねぇ、アシュリー。私もああいうようにならないかしら」
「わかりません……。本当に精霊に懐かれてないとああいう風にはならないので……。精霊がこの人に自分を捧げてもいいって思うくらいでないと……」
「そう……」
アイリス様はしゅんとしていた。
「あ、そうだ。食事のお礼に魔法の特訓でもしましょうか、フラワーさん!」
「魔法? 使えんの?」
「その状態になったら普通の魔法使いの人より強力な魔法を使えますよ!」
「まじんか! やるぜ!」
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