第15話

 私は学園の自分の寮へと戻ってきた。

 だがしかし、私はどうしたらいいんだろう。お望みどおりに支援をやめさせたほうがこの国のためになるんだろうか。

 国王は精霊が嫌いで、精霊さんもその嫌いな人のために働かせるというのも嫌だという気持ちがある。けど……。


 私の中で複雑な思いが絡み合っている気がする。

 そんな私に、アイリス様は声をかけてきた。


「アシュリーさん。どうか……今は精霊の支援を取りやめないでください」

「え……」

「そのことで悩んでるんでしょうけど……。精霊の支援がなければこの国は終わってしまいます」

「そんなこと……」


 ないとも言い切れない。

 けれど、アイリス様は確信めいた顔をして私にそう告げてきた。終わるとわかってるような顔で。

 

「……言い切れるんですか?」

「はい」

「どうして……?」

「私は未来を知っているからよ」

「未来を……?」

「私だけじゃない。ツクヨミも知ってる。なんてったって……」


 と言い切ろうとしたとき、突然部屋の扉が開かれた。

 中に入ってきたのはエドガー様だった。


「アシュリー! 落ち込んでると聞いてやってきたぞ! レッツ筋トレだ!」

「……エドガー様」

「エドガー様。女性の部屋にノックもなしに入るのはいかがなものかと思うわよ」

「こ、これは失礼ドルムンク公爵令嬢殿。だがしかし、わが友人が落ち込んでると聞いて、居ても立っても居られなかったのです! 落ち込んだ時こそ体を動かして発散! 考えるのはそのあとでもいいでしょう!」

「……そんなこと」

「そうですね……。体動かして、ちょっと発散するのもいいかもしれません」

「アシュリー?」

「よし、トレーニングルームへゴーだ!」


 と、私はエドガー様に連れられてトレーニングルームへと移動していた。

 アイリス様も不機嫌な様子でついてきたのだった。私はダンベルを持ち、おいっちにと掛け声と同時に一緒に持ち上げる。


「突然帰ってきたと思ったらめっちゃ落ち込んでたからエドガー様に相談したんだけど大丈夫そうだった?」

「アビスさん……」

「私としてもアシュリーちゃんには笑顔でいてほしいからさ……。なにがあったのか知らないけど笑顔笑顔」

「……そうですね」

「というか、あなたたち王城でのパーティには参加しなかったの?」

「ああ! 俺の親父は反精霊派だからな。参加はしねえ」

「…………」


 エドガー様の父はそうなんだ……。


「エドガー様……。私は精霊の愛し子なんですけど……」

「知ってるぜ。でもそんなの関係ねえだろ。精霊が見たことないから恐怖してるだけのビビりもんの親父だ。俺は精霊は好きだぜ。だから親父とは敵対してるんだ」

「えっ」

「ま、いいけどな。いずれ力づくで爵位を継ぐ。そのためには力をつけるんだ」

「……強引ねぇ」

「強引でもなんでも仕方ねえよ。この国は精霊のおかげで成り立ってんだろ? 考えりゃわかることだ。この国は災害が少ないからな。精霊が抑えてくれてるおかげだ」


 エドガー様はしっかりと精霊に対する理解があった。

 前に精霊さんに聞いたことがある。災害から守ってるって話。前に他国で地震や噴火があったと聞いたけれど、この国にはないよねって聞いたら前回の精霊王の命令でその山や土地に宿る精霊が守っているらしい。

 支援をやめたら、その守りもなくなる。でも、それでもこの付近の山は活火山というわけでもないからやめても問題はないというのが反精霊派の意見らしい。


「この国は精霊とともに成り立ってんだぜ? その片割れがなくなったら一気に崩壊しそうだ」

「鋭いわねこいつ……」

「だから俺は反精霊派の親父を早く当主から引きずり下ろすんだ。そのためには力が必要」

「そのことなら、私が一枚協力してあげてもいいわ。必要な時に言いなさい」

「公爵家の力添えを得れるなんて最高だな。時が来たら声をかける」


 エドガー様は嬉しそうだった。


「私は子爵家なので親しか参加資格がないので……」

「そういえばそうだったわね」

「うちの父さんは精霊すら知らないので論外ですよね」

「えぇ……」

「うちの父さんは能天気で……日々何も考えず生きてるような人間なので……。王城に行ってそんな派閥があるとは知らないと思います」

「話にならないじゃない……」


 アビスさんの家も家でちょっと変わってるなぁ。








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