第5話
自分の部屋に戻り、私は机に向かい合う。そして、日記帳を広げて今日の出来事を書き記す。
今日はいろいろ濃かった一日だったな。
アイリス様とツクヨミ様、というとんでもない偉い方の友達ができたこと、騎士のドリトンさん、子爵家のアビスさんという優しい方とも友達になれた。
私のほうから友達と呼んでいいのかはわからないけど、心の中だけでも友達ということにしておこうと思う。
日記を書き終わり、私はベッドに横になる。
横を見ると窓から月明かりが差し込んでいた。月明かりが窓の付近を照らしていて、とてもきれいな星空がここからでも見える。
とても、遠い空間に来ちゃった感じがするなぁ。この学園に入学できたのは奇跡としか言いようがない。私はただ精霊が見えただけの子供だったのになぁ。
「おやすみ」
『おやすみなさい』
私は目をつむる。
そして、気が付くと体を揺さぶられていた。
「ん……」
「おはようございます、アシュリー様」
「おはようございま……誰ぇ!?」
金髪でメイドの服を着た女性が私を起こしていた。
「失礼。私は今日からアシュリー様の専属侍女となりましたギネア・ヴィシソワーズと申します」
「せ、専属侍女?」
「はい。ツクヨミ様からの命令です」
「えっ、そうなんですか……? でも私に侍女は……」
「この学園に来て忙しいでしょう。忙しくなると、自分の身の回りのことが疎かになりがちです。ツクヨミ様やアイリス様……。ほかの貴族の皆様は自分の身の回りのことは侍女に任せているのです。アシュリー様も貴族だと思い、私をこき使ってくださいませ」
「え、別にこき使う理由ないですけど……」
洗濯とかはたしかに大変だろうけど今までもやってたことだし……。
『いいじゃない。身の回りの世話してくれるなんて優しいし!』
「いいのかなぁ……。自分のことは自分でやれって神父さんにも言われたし……」
『いいのいいの! 楽できるなら越したことないじゃない』
「そうかも。よろしくお願いします。ギネアさん」
「呼び捨てでも構いませんよ」
「そんな恐れ多いので……」
苗字もちってことは貴族だから……。
こんな平民に貴族の侍女ってちょっと怖い。
「さて! では、そろそろ朝食の時間ですので食堂に向かいましょう」
「は、はいっ!」
「まずはパジャマから着替えましょう。こちら着替えになります」
「用意周到……」
「これでも侍女の中で一番優れているものを決める、通称J-1グランプリ優勝者なので」
「そんなグランプリあるんだ……」
初耳。
私は用意してくれた制服に着替える。この後学校に行くからってことだから着替えはこれになるよね。
この学園の制服はいつ見ても綺麗だな。純白で美しい。小汚い私が袖を通すのが申し訳ないくらい。
私は食堂に移動すると、眠そうな顔をしたアイリス様とすっきりした顔立ちのツクヨミ様がいた。ツクヨミ様はまた私を呼び寄せる。断れないので席に着いた。
「侍女がいっただろう? ギネアはとても優秀な侍女だから、存分に使ってくれ」
「申し訳ないです……」
「構わないよ。侍女がいないとクラスでもちょっと浮くかもしれないという懸念もあったから手配したんだ」
「お心遣い感謝です……。それよりアイリス様眠そう、です、ね?」
「ああ、朝に弱いんだ、アイリスは」
「朝弱いのは普通よ……。あんたがおかしいの……」
「ですね。私もあまり寝起きはそこまでよくないので……」
朝弱いアイリス様にちょっと親近感。
「あ、アシュリーちゃん!」
「アビスさん!」
「おはよー! いい朝だね!」
「アビスさん、めっちゃ汗かいてますね?」
「うん。ちょっと日課のランニングをね」
「日課の?」
「うん! 体力つけるためにね! 昔はその、デブだったから私」
「そうなんですか?」
「見せれたらよかったんだけどねぇー。と、王子様、挨拶もせず……」
「いや、いいよ。私と同じ朝に強い仲間が見つかって嬉しいところだ」
「へ?」
王子様はアビスさんに微笑んだ。
「そういえばドリトン様は……?」
「ドリトンはまぁ、いつも通りまだ寝てる。アイリスより朝に弱いぞ」
「えっ」
「そうよ……。私なんかまだマシなほうよ。昨日も遅刻してたわねあいつ」
「えっ、意外……」
騎士様だから朝に強いかと……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます