第4話
精霊が見えるのは実は私一人だけではない。
条件がかみ合えば、ほかの人にも見えるようになる。
・条件は、愛し子である私の近くにいること。
・魔力が多いこと
この二つを満たせば見えるようになる。私に触れていなくても、だ。
私に触れていれば、魔力が多くなくても精霊を視認できる。触れている時間だけは。
ここは貴族が多く通う学園、私の周りには貴族のみなさんがいる。そして、貴族の皆さんは魔力含有量が平民より多い人ばかりなのであり……。
「これが精霊……?」
「うわぁ……」
ばっちり見えちゃうのである。
「えと……」
『うま、うま』
精霊は周りを見ることなく料理を食べ進めている。
料理に手を付けていた四人の手は止まっていた。初めて見た精霊に驚いてるんだろうな……。
精霊はやっとみられていることに気づいたのか、王子にガンを飛ばしていた。
『何見てんのよ!』
「こ、こら!」
「い、いや、いい。失礼した、精霊殿」
『わかればいいのよ。あまりれでぃが食べてるところを見るものじゃないわよ。あまりモテないのね』
精霊……っ! この国の王子に対してなんてことを言うんだ……。
「ごめんなさいごめんなさいうちの精霊がとんだ失礼な発言を……」
「気にしないでくれ」
「ごめんなさいごめんなさい磔にでもなんでもなります……」
ひたすら謝っていた。精霊の失礼な発言を。
ひたすら頭を下げている私の横で、満足したのかふいーっとお腹をさすり私の胸元に戻ってくる精霊。
私はものすごく居心地が悪くなってしまった……。
「気にしないでくれ。精霊様の癇癪に触れた俺が悪いんだ」
「ですが……」
「そうだぞ。精霊様は何も悪くねえんだ。純粋だからな」
「そうよ。謝る必要なんてないわ。精霊様は気分屋だから」
許してくれた。ありがたい……。ギロチンとか見えてきちゃったからどうしようかと思った。首の皮一枚つながった……。
「だが精霊様にアシュリーの料理大半食べられてしまったわね。お代わりとってきましょうか?」
「いえっ! お気になさらず……。空腹は慣れておりますので……」
「……なぜ慣れてるんだ? 精霊の愛し子が空腹になれるような状況ってなんだよ。本来なら第一に国が保護するもんだろこいつ」
「……それなんだが、発見が遅れたのもあるんだ」
「……それって国の落ち度だろ? やばくね?」
「ああ、状況的には非常にまずいんだ。アシュリーのやさしさでなんとかなってるようなものなのだ」
えっ、私が保護されなかったからまずいの?
話を聞くと、精霊の愛し子は国にとっても重要なものらしい。数百年に一度、生まれて来るそうだが国王も誰も愛し子が生まれていることに気づかなかったぐらい私の影が薄かったようだ。なんか申し訳ない……。
「あと少し見つけるのが遅かったら精霊様の怒りを買っていたかもしれんな」
「学園入学と同時に見つけられて奇跡かよ……」
「ああ、本当に奇跡だ。父上にも一応報告はしておいた。後日、父上が謝りにくるらしい。精霊の愛し子に」
「えっ」
それを聞いて固まってしまう。
ツクヨミ様の御父上。それはもしかしなくてもこの国の国王様ではないだろうか。
『そうね! 謝ってもらいましょ! アシュリーをあんな孤児院においておかせたこと!』
「こらっ! いいの! 私はあれでも幸せだったから……。あ、あの、謝りに来ずとも私はいいんです……よ?」
「そうともいかんのだ。我が国としても精霊の怒りを買うのはまずい。この国は精霊がいて成り立っているようなものだからな」
「そうなんですか!?」
「ああ。アシュリーが思う以上に精霊の愛し子っていうのは重要な立場なのだ。本来ならば護衛を付けなくちゃならないが……」
『私がいれば襲わせないわよ! 護衛なんてきゅーくつなマネをアシュリーにさせないで!』
「と、精霊様の怒りを買う可能性も考慮できる。アシュリーと仲がいい精霊はそういうの許さないタイプと知れてよかったよ」
なんかごめんなさい……。私自身も愛し子の立場性とかなんもわかってないです。本当にごめんなさい……。
「言い訳させてもらうとするとね、愛し子って文献を調べてみてもみんな貴族出身だったのよ。貴族調べたらわかるでしょうってことで平民は調べなかったのよね」
「平民でごめんなさい……」
「いや……。もしかするとなんですけど、孤児院にいたんですよね? となると、貴族の誰かが捨てた子なのではないでしょうか……」
「その可能性があるな。調べてみよう」
「なんか面倒なことになってきちゃった感じです、ね? ごめんなさい……」
気にしないでください……。
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