第7話

 竜巻を何としてでも止めなくちゃいけない。

 精霊の怒りを鎮められるのは私だけ……。どうしよう。解決策はなくはないんだけど……。その場合私死ぬかもしれないし……。

 で、でも迷ってる暇はない、よね。私一人が死んでどうにかなるなら死のう。


 私は覚悟を決めて、竜巻の中に飛び込んだのだった。


『アシュリー!?』


 竜巻がなくなる。

 私は竜巻に巻き込まれていた教室の机で思い切り頭をぶつけていた。意識が飛びそうなくらい痛かったけど何とか生きてる。

 私は頭から血を垂れ流し、精霊を止める。


「ダメ。私の言うことを聞いて」

『アシュリー……』


 私はその場に倒れる。

 

「アシュリー!」

「アシュリーさん!」

「アシュリー、おい!」


 ツクヨミ様たちが駆け寄ってきてくれた。

 今にも意識が飛びそうだ。だけど、ここで気を失っても何も解決はしない。精霊を止めるのは私の役目。暴走させてしまったのは私のせいだから……。

 だけどもう意識を保っているのもきつくなってきた。

 死ぬ……。これはもう死ぬのかもしれない。


『アシュリー! いまなおす!』

「精霊さん……」

『精霊のみんな、力を貸して!』


 周囲にいた精霊が寄ってきて、私の治療を始めていた。

 傷がみるみるうちに塞がっていき、頭の痛みが嘘のようになくなっていく。なんか元気になった。精霊ってすごい。


「ん、なんともなくなった」

『なおった!』

「あれで治せるのか……」

「とことん精霊ってのは規格外だな。さてと。あとはあいつの処分だけだが」

「そうだな……。ヘンリー・アブラハム。貴様には精霊を暴走させた罪などがある。厳しい処分が下ると思え。言っておくがかける慈悲はないぞ」

「ひっ……」


 アブラハムさんは恐怖で固まっていた。

 そして、私に縋りついてくる。


「謝ります! 謝りますからお許しを! ごめんなさい、アシュリー様! すいませんでした!」

「あのぉ、私としてはそこまで大事に……」

「教室内をほとんど破壊しつくした竜巻を起こした精霊。精霊の怒りを買ってこのクラスの奴らに大迷惑をかけている。少なくとも被害は出ているのだ。大事にならないわけがない」

「……そっちは精霊の暴走を止めれなかった私のせいで」

「精霊の怒りを買ったアブラハム令嬢のせいだ。止める止めないではなく、何が原因で引き起こしたか、だ。精霊に人間の道理は通用しない。精霊を怒らせるようなことをした者が悪い」


 理路整然と詰めてくるツクヨミ様。正直ちょっと怖いです。


『ごめんねぇアシュリー。怒らないで』

「ちょっと怒るよ……。私の言うことを聞いて。お願い」

『ごめんなさい……』

「いいよ。もう……。起きちゃったことは仕方ないし」


 精霊はものすごく反省しているようだった。

 ドリトン様は私に縋りついているアブラハム令嬢をつかみ、ひきずっていく。騒ぎを聞きつけて先生たちが教室にやってきて教室の惨劇に驚いていた。

 アイリス様が状況の説明を始める。先生は納得したみたいで、とりあえず今日は帰らされることになった。


 教室は補修する必要があるらしい。天井には穴が開いていて、机がほとんど壊れていたし……。

 私とアイリス様、ツクヨミ様が先生に呼び出され、少し説教を受けた。


「本当に災難な一日だった……」


 私は自分の部屋でそうこぼした。

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