精霊の愛し子は何も知らずに生きている
鳩胸ぽっぽ
第1話
王国立アマテラス学園。
アマテラス王国に属する学園で、貴族が通う学園。貴族は学園に通うことが義務付けられており、子爵から公爵、はたまた王族までもが通う学園。
ここは国の縮図になる場所。
そして、この学園では100名だけ平民の生徒の入学が許される。
平民は受験と呼ばれる筆記試験、スキルや魔法の強さを測る技能試験の両方を突破、もしくは聖女や精霊の愛し子などの特別な力を持った者しか入学ができない学園。まぁ、平民も基本的に通わされるんだけど。
「本日は、新たに300名の生徒を迎えることとなりました。わがアマテラス学園では……」
長ったらしい学園長の挨拶が終わり、私は振り分けられたクラスに向かう。
クラスも貴族と平民で分けられていて、伯爵から公爵クラスが1組、子爵、男爵クラスが2組、平民は3組からということになっている。
ちなみに、聖女などの国にとって重要な力を持つ生徒は1組に振り分けられる。
「なんで寄りにもよって私が精霊の愛し子なんだろー……」
私の名前はアシュリー。パルテット孤児院出身の15歳。
私は小さい時から精霊が見えていた。それが当たり前だと思っていた。だがしかし普通ではなかった。
スキル検査と呼ばれる検査があり、そこには私が精霊の愛し子で、精霊魔法を使う人間だってことが言われて大騒ぎ。
すぐに入学準備が進められて、晴れて入学することになったが、私は孤児院出身だから絶対いじめられるだろうし、聖女もなんか今年入学するって聞いたし相当嫌な立場にいる。
「どうか平穏に過ごせますように……」
私は指定された席に座る。
周りは貴族らしい貴族ばかりだった。ぴちっとお堅い制服を着こなし、すでに交流の輪ができていて、派閥もできて居そうな雰囲気だった。
私は自分の席にただただ座っているだけだった。
「……私は空気、空気なんだ」
「初めまして。貴族では見ない顔ね? あなた名前は?」
私がうつむいていると声をかけられた。
目の前には金髪でツインテドリルのちょっときつそうな女の子が立っていた。
「ああ、人に名前を聞く場合は自分からがマナーよね。私の名前はアイリス・ドルムンク。ドルムンク公爵の長女よ。よろしくね」
「え、えと……わ、私は貴族ではなくて……」
「聖女かしら? それとも……」
「精霊の愛し子らしい、です。はい……。アシュリーっす……」
私はそう自己紹介すると。
「そう。あなたは最初はそういう感じだったわね」
「なんか言いました?」
「いいえ? それより、仲良くしましょうよ。私、あなたとなら仲良くできそうだわ」
「いえ! 私は平民ですし! 貴族様のマナーとかわからないので……」
「この学園では基本的に無礼講だ。マナーだなんだのは気にするな」
と、横やりを入れてきたのは私でも知っている人。
「王子様……」
「ツクヨミ・アマテラスだ。よろしくな」
「は、はは、はい!」
「緊張しなくてもいい。私も、私の婚約者が興味を持ってる相手に興味があってね。精霊の愛し子というのも、興味が惹かれるね」
「た、ただ精霊が見えるってだけですから! お、王子様もアイリス様も私にかまってる暇ないですよ!」
なんで王子様が話しかけてくるんだろう。
こんな何の変哲もない私に。ちんちくりんな私に……。
「そうだったな。君はこんな風に純粋だった」
「……あの、婚約者様といい独り言が流行っているのですか?」
「ん? ああ、なんでもない。気にするな。そろそろ先生が来る時間だ。アイリス」
「ええ。また、寮でお会いいたしましょ?」
「え」
寮でも会うんですか!?
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