第2話
アマテラス学園には寮が存在して、貴族、平民問わず寮にまずは属することになるようだった。
平民は平民寮、貴族は貴族寮と分かれ、今日はその説明会もあるようだ。私が属しているのは1組で貴族クラスなんだけど私は出自が孤児院だから平民寮だろうなと思い、平民寮の説明会の会場へ向かおうとすると。
「アシュリーさん。一緒に行きましょう」
「えっ」
「共に行こうか、アシュリー」
王子様とアイリス様が私の両腕をがっちりつかんで貴族寮の説明会へと運ばれていったのだった。
なぜ。
強制的に貴族寮の説明会を受けさせられる。
貴族でももちろん階級があり、一番高い身分の人から自由に部屋を選ぶようだ。子爵、男爵はともに相部屋で過ごすらしい。
アイリス様、ツクヨミ様はこの国でもものすごく高貴な方であるためもちろん最初に部屋を選ぶ。アイリス様が月の間、ツクヨミ様が太陽の間だった。そして。
「アシュリー様。部屋をお選びください」
「えっ……」
公爵家の人たちが選び終えた後、なぜか私が選ばされた。私も相部屋だと思っていたんですけど。
思わずフリーズし、私は固まっていると。
「そうね……。私たちと近いほうがいいから……。アシュリーは朝の間がいいんじゃないかしら」
「そうだな。なにかあっても俺らが対応できる」
という後押しがあり、私は朝の間に決定した。
あれよあれよという間になぜか着々と進んでいく物事。私はもう許容範囲がとうの昔にオーバーしている。
私は気が付くと豪華な部屋にいた。今までの記憶がないが、朝の間が自分の部屋になったのは覚えてる。
無駄に広い。天蓋つきのベッドに豪華な棚とか机。無駄に広い。
なぜ。
「……そっか、これは夢なんだ。私は平民だからこんな待遇がいいはずないもんね。よし、二度寝しよ」
現実から目を背けることにした。
それにしてもこのベッドフカフカだなぁ。孤児院のものとは比べ物にならないや。孤児院はもう床で寝てたようなものだし……。目覚めて体がばっきばきということもないだろうなー。
……いつのまにかこの環境を享受し始めている。
『アシュリー気持ちよさそー』
「わかるー? 気持ちいいよ」
『アシュリーが幸せそうでうれしいよー』
「ふふ、ありがとう」
精霊が私の懐から飛び出して笑いかけてきた。
『私たち精霊はアシュリーの幸せを願っているよ』
「今までも十分幸せだったけどね」
『わかってるよー。でも、この学園でもアイリスさんとかツクヨミさんとか、優しい人ばかりだし、もっと楽しめそうだね』
「そうかなぁ。身分が違うからあまり話しかけられないかも。ちょっと話しかけづらいし」
『アシュリーは奥手だなぁ。壁を作ってるからダメなんだよー。アシュリー、精霊の愛し子ってめちゃくちゃ偉いんだよ。もっと気軽に話しかけていいんだよ』
「うーん。それが出来たら苦労しないんだよなぁ」
私はくつくつと笑いながら精霊にそう返した。
『ふふ、アシュリーのそういうところも大好き。いつでも困ったことがあったら私に言ってね。いやなことがあったら私に言ってね。私はアシュリーのためなら何でもするよ』
「あまり言わないよ。だって本当に何でもできるから怖いもん……」
『じゃあ私が勝手にやっちゃう』
「それもやめてよー。勝手にやっても迷惑だろうし……」
『はーい』
精霊が笑う。
すると扉がノックされた。精霊は私の懐に隠れる。
「はい」
『アイリスです。そろそろ夕食の時間なので一緒に食べませんこと?』
「えっ」
一緒にですか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます