第9話
『精霊王様の力に覚醒したのね! めでたいわーーーー!』
私の姿を見るや否や、精霊は狂喜乱舞だった。
激しく飛び回る精霊。私は精霊に精霊王から戻るためにはと聞いてみるが。
『戻れないわよ? だって精霊王になってるんですもの。つまり、アシュリーは私たちのリーダーなの!』
「え゛」
戻れない。
嘘ですよね? こんな緑色の髪でものすごく目立つんですけど……。明日からどんな顔をして……。
というか。
「精霊王に覚醒したんだったら私の姿見えてるんですかね? 精霊と同じってことですよね?」
『それに関しては問題ないわ! 精霊王様は力が強いの。人間の視界に移るのは容易なはずよ。どれ、新米精霊王様に精霊の力ってのを教えてあげましょうかね!』
精霊さんがいろいろと教えてくれた。
私の体はもう人間ではなく精霊なので、物をすり抜ける、宙に浮くというのは普通にできるようになったらしい。やってみたら本当にできたのでちょっと怖い。
そして先ほども使用した精霊の力。自然の力を借りてさまざまな現象を引き起こすことも可能になったようだった。
『さすがアシュリーね。呑み込みが早いわ!』
「どうも……」
本当に人間辞めちゃった……。
あの時だけでよかったんだけど……。私は一応伝えておこうとツクヨミ様の部屋に向かうけどツクヨミ様はいなかった。
じゃあアイリス様……と思ったけどアイリス様も不在。
「ねえ、アイリス様とかはどこいったの?」
「おそらくアシュリー様のことを報告しに王城へ向かったかと」
「私の?」
「精霊王の力に目覚めた……という話ですから、重大なことなのだと思います。私も精霊王というのはよくわかってはおりませんが……」
「そうですか……」
しばらく帰ってこなさそうだな。
私は仕方ないので昼食を取りに食堂へ向かうとなにやらアビス様が使っていない部屋に入っていったのだった。
なんであそこに? と思いながら、ちょっと気になったので見えないようにして私も部屋に入ってみる。
その部屋の中にはものすごい数のトレーニング道具があった。
「アシュリーちゃん、最近落ち込んでたなぁ。トレーニングに誘ってみようかな? 体動かしたらすっきりするしな」
「アビスさん……」
「でも私なんかがいいのかなぁ。爵位もそんな高くないし、ツクヨミ様とかとめっちゃ話してるし失礼になってないかな」
「いえ、気にしなくても……」
「ま、うじうじ悩んでるのは性分じゃないや! あと懸垂20回!」
アビスさん優しい……。
懸垂が終わり、アビスさんも昼食を取りに行こうとしていた。私は外で姿を顕現させて、偶然を装い合流した。
「あ、アビスさん! 偶然ですね!」
「偶然だね! お昼ご飯食べに行くの?」
「はい!」
「じゃあ一緒に……ってなにその髪!? 染めたの?」
「あ、染めたっていうか……。こうなっちゃった?っていうか」
「ほえー。イメチェンしたい時期なのかな。似合ってるよ!」
「そ、そうですか?」
似合ってるって言われて嫌なはずもない。
アビスさんはとてもさわやかな笑顔を浮かべている。嘘偽りのない笑顔だってなんとなくわかる。
精霊となってから人の気持ちの機敏がなんとなくわかるようになっていた。嘘かどうかも直感でわかるみたいな感じになっていた。
感性が鋭くなったのだろうか……。
「詳しいことは食べてる時に話します」
「ん? わかったよん」
そう言って、一緒のテーブルに座る。
「精霊王の力に覚醒!?」
「はい。つまり今の私は精霊なんですよ」
「ほえー……。すごいところいっちゃったねぇ」
「本当に……」
「じゃあさ、精霊の力が使えるってこと?」
「そうですね。精霊みたく姿を消したり、物をすり抜けたりはできるみたいです」
「うわー! いいなー!」
アビスさんは裏表がない気がする。一緒にいて心地がいいな……。
「じゃあ、もう心配ない感じ? あの教室での竜巻騒動でめちゃくちゃ落ち込んでたって聞いたけど……」
「はい。もう大丈夫です。心配かけてしまいすいません」
「いいんだよ! 落ち込んでたら体動かしてみないかって誘おうと思ったけど杞憂だったね」
「え、いや、ぜひ一緒に体を動かさせてください!」
「いいの?」
「はい! トレーニングしたいです!」
「そっかぁ! じゃあ、私特製のトレーニングルームにご飯食べ終わったら案内してあげるよ!」
私はご飯を書き込むようにして食べて、一緒にトレーニングルームへと向かったのだった。
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