第19話
ドリトンはすべてを思い出した。
自分たちもツクヨミと同じように、未来を変えるためにやってきたことを。ただ呆然と立ち尽くし、ツクヨミの顔を見る。
「おかえり、ドリトン」
「ああ……ただいま」
ドリトンは未来の記憶を引き継いだ。
自分が先ほど取ろうとした選択は悪手であった。後悔する前に、あったであろう未来を知ることができた。
「んで、お前はこの先どうする?」
「……しばらくは反精霊派の親父の言いなりになるようにする。あっちの情報を少しでも引き出すんならそっちにいたほうがいいだろ」
「だな。今度は殺しに来るなよ」
「わかってる。俺はもうあいつを殺さない。殺してしまえばまた俺は後悔する」
ドリトンは微笑んだ。
会場に戻り、ドリトンは父に相談する。精霊王が帰ってしまったことを。父は爪を噛んでいたが、また後日機を見計らって殺せという指示だった。
そして、パーティが終わり寮へと戻る。
「アイリス」
「なによ、ドリトン」
「悪かった」
「……なにが?」
「俺思い出せてなかったんだ、未来のこと」
「……え? てっきり思い出してるものだと思ってたわ」
「え?」
「だってあそこで出会う運命じゃなかったじゃない。てっきり会いに来たんだと思ってたけれど……。思い出してなかったの!?」
「あ、ああ」
アイリスはドリトンが未来の記憶を引き継いでいなかったことを知らなかったようだ。
「で、アシュリーは?」
「アシュリーならエドガー様、アビス様とトレーニングに励んでるわ」
「そっか。……なぁ、俺らはまだ未来のことがあるからいいが、あいつらは何なんだ? 未来で関わりなかっただろ」
「そこが不思議なのよねぇ。エドガー様とアビス様に関しては私もわかってないのよ」
「敵か味方か……わからねえな」
「まぁ……二人ともそこまで考えてなさそうだし安全じゃないかしら」
アイリスは少し苦笑いをしていた。
というのも、先ほどまで一緒に筋トレをさせられそうになっていたからだ。理由を付けて逃げ出してきたのだが。
アイリスたちはトレーニングルームの前に戻ると、中から。
『たずげでぇ~~~~!』
というアシュリーの声が聞こえた。
「どうしたアシュリー!?」
「もう1セット! お前ならできる!」
「も゛ー無理でずぅ」
「無理だ無理だはできる証! 頑張れ!」
「……なんだこれ」
トレーニングで苦しんでいるアシュリーの姿。アイリスは頭を抱えていた。
「トレーニングしてると弱音を吐く性格みたいで。あれでも結構楽しんでるっぽいのよ」
「変な性格だなオイ」
ドリトンは心配した気持ちを返してほしいという目をアシュリーに向けた。
「はいお疲れさん! よくやったなアシュリー!」
「イエー!」
「もう立ち直ってるみたいだな……」
「筋トレ、なんか趣味になってるみたいよ」
「ムキムキのアシュリーは正直見たくねえけど……」
「ツクヨミ様もそういってたわ」
ドリトンは大きく溜め息を吐いた。
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