第22話

 休日は先生と精霊探しの旅をしていて外出することが多くなった。

 だけど、そのおかげもあり先生は私の味方になってくれると言ってくれてちょっと嬉しいという気持ちもある。

 反精霊派の先生もいたそうだけど魔法を見たら手のひらを返した。


「はい、今月分の給料だよ」

「ありがとうございます!」

「あんた最近よく働くから色付けておいたよ」


 バイトも続けていた。

 今日は初給料をもらった。中を見ると金貨が20枚入っている。めっちゃもらえたなぁ。

 初給料でなにか買おうかな。高いものは買えないけど、お菓子とかそれぐらいならいいよね……。

 私はお菓子のお店でお菓子を買い、外に出る。砂糖菓子は甘くてとても美味しい……。


「んー、甘くておいしい~!」


 私はパクパク砂糖菓子を食べていると、なにやら変な人影が見えた。

 学園の制服を着てる。でも、この国の人間じゃなさそう? めっちゃ豪華な馬車が止められていて、貴族の方だと推測はできる。

 貴族の人がこんな下町に何の用なんだろ? まぁ、関わらないほうがいいかな……。私は視線を逸らそうとしたとき、その男の人と目が合った。

 私は思わず目を逸らしたが。


「どうして目を逸らすんだい?」

「すいません、すいません……」


 話しかけてきちゃった。


「目をそらされるなんてちょっとショックだな」

「すいません……」

「いいよ。それよりさ……。アマテラス学園ってどこか知らない? 迷っちゃって」

「え……」


 あそこにもう見えてるけど……。


「あれ、です……」

「あれか! いやぁ、助かったよ。僕ものすごい方向音痴でさ、すぐ迷うんだよね。いつもなら付き人がいるんだけど、置いてきちゃって」

「そ、そうなんですか……」

「ありがとう。なにか恩返しを……」

「いや、恩返しはいいです……」

「そういうわけにもいかないな。我が家の家訓でね。受けた恩は倍にして返せという家訓でさ。そうだな……」


 断ることはできなさそうだ。


「そ、それなら私も学園に送っていただければ……」

「学園の生徒かい?」

「はい、一応……」

「わかった。じゃ、馬車に乗ってくれ」


 というので、私は馬車に乗り込んだ。

 男の人は御者席に乗る。え、御者の人いないの……? こんなすごい馬車なのに? 私は少し驚いていると、馬が走り出す。

 そして、学園と真逆のほうに走り出した。


「そ、そっちじゃないですよぉ! あっちです!」

「え、あ、すまんすまん。本当に方向音痴ですまん」

「方向音痴どころじゃないと思いますけど……」


 さっき言ったばかりなのに。

 私はちょっと不安で、外を眺めながら案内した。間違った方向に行きそうになったら声を上げて、と繰り返していたけど、目を離した瞬間に道がそれていたりもする。それで結構時間を食ってしまった。


 夕方位にした町の広場を出たはずなのに夜になってしまった。本来なら歩いて20分くらいかかるかかからないかくらいなのに3時間くらい経過してしまっていた。

 歩いたほうが早かった……。


「くそー、夜になってしまったか。指定された時間よりものすごく遅くなってしまった」

「誰かと約束があるんですか?」

「この国の王子。実はね、俺、明日からここに留学に来るんだよ」

「そうなんですか。だから学園に……」

「本来は昨日の朝につく予定だったんだけど、迷いに迷って今日の夜についちゃった。ツクヨミ、怒ってるよなぁ」

「……ちなみにどこから」

「隣のヨルデール帝国から」

「ヨルデール……帝国」

「あはは。大国の名前を聞いて怖がらせちゃった? 帝国は大丈夫だよ。ここより平和」

「えっ」


 ここより平和なんですか……?









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