第13話

 ツクヨミ様は椅子に腰を掛ける。私はベッドに座るように促されてベッドに座った。


「まずな、この国の貴族には二つの派閥がある」

「派閥?」

「親精霊派と反精霊派だ。この国は精霊のおかげで成り立っていると論ずる者、人間の力で栄えたと言い張る者。この二つの派閥がある」


 そんな派閥が……。

 国の成り立ちで派閥ができるとは思いづらいのですけど……。私としては今を重要視したいということもあるのでどういう風に成り立ったかまではどうでもいいと思うのは私だけでしょうか。


「反精霊派にはな、精霊をこの国から排除しようとしている動きもある。先日の襲撃事件はその過激派による犯行だ。ようするに自分たちの証明をしたいわけだ。精霊がいるからこの国は続いているんだという論説を否定したいためにな」

「なるほど……」

「で、この二つの派閥。アシュリーならなんとなく想像はついてるだろ? 俺の父親がどちらについているかが」

「……反精霊派、ですよね」

「そうだ」


 だからこそ私をにらんできていたのだ。

 一国の王であるから、どちらについているとも言い難いが、気持ち的には反精霊派なんだろう。

 それならば精霊王は追放すると言えばいい。が、それを言えない勢力がある。親精霊派。その中に敵に回したくない家がある。とするならば……。


「で、私に向けられていた視線。それは私の父親が親精霊派だからよ」

「……ですよね」

「公爵家は親精霊派しかいないの。だからこそ、国王が精霊をむやみに扱えない理由なの」


 公爵家という身分が高いものが親精霊派だからこそ、受け入れるほかなかったんだ。


「でもなんでそんな成り立ちだけで派閥が……?」

「他国の評価だ」

「他国の……」

「父上は精霊がいることでしか評価されないのを嫌っていた。だからこそ反精霊派なのだ」

「簡単に言うと……。そうね。たとえば私に対して父親がものすごく偉いからすごいよって言ってるようなものよ。精霊は他国ではいないからね。精霊は人智を越えた力を持つ存在。それに手を貸してもらえてる国はすごいっていう評価なのよ」

「それが気に食わないと」

「ああ。自分を見てほしいということだ。だからこそ、過激なまでに嫌っている」


 理由はなんとなくわかった。


「国王様も今現在相当焦っているはずよ。だって精霊王に覚醒してしまったんだもの。精霊の愛し子のままでいるならばまだ力は弱いまま。なんとかできたけれど……。精霊王となると何をされるかわからない。だからこそ、なおさら追い出しづらくなった……」

「力におびえているからこそ、なにもされない。が、何かしてくるとは思うがな」


 そんな怖いこと……。

 なら私が出て行けば安泰じゃないだろうか。とも思ったけど、そうなると親精霊派である人たちがどうするかわかんないのか……。

 難しい立場だ……。


「手っ取り早く解決する方法はなくはない。が、割と無理難題に近い」

「無理難題……?」

「二つある。一つは俺が国王になること」

「ツクヨミ様が……?」

「ああ。だが、父上は俺ではなく俺の弟に王位継承権を譲る可能性が非常に高い。俺の弟……第二王子は反精霊派だからだ」


 なるほど。身内贔屓……。


「二つ。クーデターを起こすこと」

「そんな物騒なことを!?」

「ああ。そうなると、俺は王座に就ける。成功すればの話だが」

「……無理そうですね」

「ああ。後者は人が死ぬのは避けられない状況になってしまうからな。あまり国民に混乱を与えたくない。これは最後の手段になる」

「だからこそ……困っている。どうやって父を国王の座から引きずり下ろし俺が国王になるかを。王族の中で親精霊派なのは俺くらいだからな。肩身が狭い」

「まあ考えても仕方ないわ。とりあえず夜のパーティよ。参加はしたくないのよね? アシュリーは」

「はい……」

「でも、私としては参加してほしいのよ。親精霊派の人たちとは交流しても損はないし、伝手はあったほうがいいから」

「……」


 どうしようか。

 私はパーティに参加するべきなんだろうか。









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