第33話 踏み出す一歩

 ランが自分からレイとの別れを宣言し、まさか自身の浮気まで告白するとは思わなかった。


 最初は耐えられなくなったのかと思った。


 目に見えて憔悴していたから。


 でも違った。


 ランは約束の継続を望んだ。


 レイ君と別れた上でだ。


 なにが切っ掛けになったのかは分からないが、縋るのを止めたのだろう。


 良い兆候だ。


 それにお節介なことに「好きな相手として抱かれて」なんて言ってくる始末。


 そこまで言われたのなら私も覚悟を決めた。


 形の上でもレイとランは正式に別れたのだし。


 あの初めての記憶を塗り替える時だと。


 まあ、それが元カノの家というのにレイは抵抗感があったようだけど、私はランの部屋が良かった。


 ランが私とレイの関係を、何もなくても繋がっているようで羨ましいと思ったように、私もレイとランの関係が羨ましかった肉体的に強く繋がることの出来る二人に。


 それは、私が勝手に張り合ってるだけで、見せつけたいという浅ましい気持ちも無くは無い。


 あと本当にレイと私が結ばれた時のランの反応を確かめたいというのもある。


 ランが絶望して諦めるのか、それとも……。


 まあ、ランのことは別にして、レイと私達の関係をどうするのかは、なにより大事な事だ。


 正直、どちらかが告白すれば付き合うことになるだろう。


 周りからも、ランが浮気を告白したことでそれほど反発は無いと思う。 


 でも、私達には共通のトラウマがある、それを乗り越えないと付き合うことは難しい。


 だから、次の土曜日は私にとっては決戦の日。

 

 この日のために自分で体を慣らしもした。

 流石に道具を使うのは躊躇して出来なかったけど、あの時よりは大丈夫だと思う。

 彼氏の喜ぶ事だってエッチな動画を見て勉強した。


 きっと上手くいく。

 

 でも、やっぱり考えてしまう。

 自分の貧相な体でレイは満足できるのかと。


 あの女の私から見ても豊満で魅力的な体をしたランを抱き馴れたレイが私の体を見てどう思うかを。


 レイがそんな事を思うはずが無いと分かっていても、一度失敗した私は思ってしまう。


 また、レイを失望させたらどうしようって。


 臆病な私が顔を出す。



 そんな私にレイが言ってくれた。


「今度は何があってもスイの手を離さないから。もし失敗しても二人で乗り越えよう」って。


 少しだけ気負いが無くなった。


 でも、心の何処かでランに勝ちたいという気持ちは無くならなかった。


 

 そして迎えた土曜日。

 レイと一緒にランの部屋に行く。


 私達の緊張が伝わったのか出迎えてくれた後の

ランも何処かぎこちない。


 三人共に無言のままの気まずい空気。


 口火を切ったのは私。


 ランに向けて宣言する。


「じゃあ、今からレイとは友達としてじゃなくて本気で行かせてもらうから」


 威嚇するような強い口調になってしまうのは、私の余裕の無さからだろう、我ながら情けない。



「うん」


 ランは寂しそうに頷くだけで止めようとはしない。


 そんなランをレイは申し訳無さそうに見ながら、それでも私の手を取ってくれた。



 そしてレイと私は手を繋いで寝室へと向かった。


 


 


 


 

 

 

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彼と彼女のやり直し コアラvsラッコ @beeline-3taro

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