第5話 前準備
前日から入念にお掃除をしたりして迎える準備は万全だ。
レイ君にはさらりと言ってあるけど、私の両親は連れ立って海外出張に行く事が多く、むしろ家に居ることの方が少ない。
一応、家事全般はヘルパーさんが日中にやってくれてるので困ることもほぼ無い。
そのヘルパーさんも、土日祝は基本休みなどで家に来ることはない。
なので、土日のお家は私だけの城となるのだ。
もちろんアレの準備も抜かり無い。
サイズが分からないからあらゆるサイズに対応出来るよう全て揃えておいた。
そして運命の午前十一時。
待ち人は約束通りに来てくれた。
チャイムの音が鳴り、インターホンを確認すれば間違いなくレイ君の姿。
「どうぞ」
ちょっとだけ声が上ずってしまいながら、オートロックを解除する。
すぐさま玄関前まで行き、今か今かとレイ君が訪ねてくるのを心待ちにする。
しばらくすると、部屋のインターホンが鳴り、そのタイミングでドアを開く。
すぐに出て来た私に驚いたのか、レイ君が目を大きく見開いて私を見た。
それだけで胸が高鳴り、思わずレイ君の手を握ると部屋の中に案内した。
レイ君が遠慮がちに「お邪魔します」と言って中に入る。
リビングまで案内しソファに腰掛けてもらう。
もう少しで夏休み前、きっと外は暑かっただろうから、すぐに冷たい麦茶を用意する。
「ありがとう。喉乾いていたんだ」
そう言って、一気に麦茶を飲み干す。
ごくごくと麦茶が通るたびに動く喉元に何故か惹きつけられ自然と注視してしまう。
私の視線に気付いたのかレイ君が「どうしたの?」と尋ねてきたので、曖昧に笑って誤魔化すと「もう一杯のむ?」と尋ね返した。
レイ君は頷くと「もう一杯、お願い」とコップを私に差し出す。
私はもう一杯レイ君のグラスに麦茶を注ぐと、自分の分のコップを用意して、緊張から乾いてきた喉を潤す。
麦茶を飲んだあとはさり気なくレイ君の隣に座り、他愛のない話からしばらくお喋りしていると、インターホンが鳴らされる。
きっとレイ君と食べようと注文していたお昼ご飯が届いたのだろう。
私はレイ君に断りを入れてインターホンに出る。
相手はやっぱり注文していたお店から届けに来たデリバリーの人だった。
オートロックを解除して部屋の前まで来てもらい商品を受け取ると、リビングまで戻り、レイ君に声を掛ける。
「お昼まだだよね、一緒に食べよう」
本当は手作りか良かったけど、まだまだ人に振る舞える程のレベルではないので今回は出前にした。
「良いの、なんか凄くいい匂いがするんだけど」
ソファから立ち上がったレイ君が匂いに連れて私のところまで来る。
私は届いたお重をダイニングテーブルに置くと座るようにレイ君を促す。
私も真向かいに座り、レイ君も座ったのを確認してから、二人で一緒にお重の蓋を開ける。
香ばしい匂いが一気に解放され、嗅覚を刺激し食欲を促す、
「うわぁ、ウナギじゃん。僕好きなんだよね」
『ふっふふっふ』
レイ君の嬉しそうな反応に内心で笑みをこぼす。
もちろんレイ君の好物は、スイから聞いてリサーチ済なので抜かりはないのだ。それにウナギって精力増強にもなるって聞いていたから……これで前準備は整った。後は本番に望むだけだ。
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