第31話 最初の一歩
二人に罪を告白した後。
先輩にもメッセージで経緯を伝えた。
あの男に脅迫されたこと、自分の過ちに気付いてレイ君に罪を告白した事、そして今後は一切会わない事と連絡先も消す事を告げた。
こちらからの一方的な内容だったが、あの先輩なら気にしないだろう。
その身に火の粉さえ降りかからなければ。
だからレイ君にも言っておいた。
思うところがあっても、あの先輩には手を出すなと。
そんな事を言うと、あの先輩を庇っているように思われて嫌だったが、あの先輩は普通じゃない、だからこそレイ君には関わって欲しくなかった。
事実それは正解で、私を脅してきた男はあの後すぐに転校していった。聞こえた噂では親の事情との事だったが多分、先輩が仕組んだ事だろう。
あの男が転校してすぐに「処理しておいた」なんて知らない番号から電話メッセージが届けば想像が付く。それと当時に、それが今後一切、私達の関係については他言無用だという警告であることも。
それからは本当に一切、先輩も含め元生徒会メンバーとも交友を断った。
先輩も私は当然としてスイにも関わらなくなり、あっと言う間に本当の赤の他人の距離感になった。
それこそすれ違っても見向きもしないくらいに。
そして、なにより大きく変わった事は私とレイ君の学校での関係だろう、今までのバカップルぶりが嘘のようなぎこちない距離感。
他の友達には私がやらかして喧嘩中とは伝えた。
お節介な友達には執り成してあげようかなんて言われたけど、絶対にしないようにと釘を差した。
だって禊も終えてないのにそんな事をすれば失望されるのは目に見えているから。
私は許されるまで、自分からレイ君に歩み寄る事は出来ない。そうなると必然的にレイ君とは距離を置かなければいけなくて、ただ目で追うことしか出来なくなっていた。
スイに関しては表向きは私と変わらず接してくれていた。
ただ、レイ君に対しては以前より距離感が近くなった気がする。
正直に言えば、その事に嫉妬を覚える。
私にそんな資格なんて分かっているけど……。
そんな微妙な距離感のまま一週間が過ぎ、あの悪夢のような時間がまたやってくる。
週末は約束通り二人が私の家に来て寝室に籠もる。
そして私はじっと耐える。
二人の絡み合う姿が頭の中を支配する。
スイは親友として慰めると言っていたけど、本当は愛を囁きあってるんじゃないかと邪推する。
その妄想を打ち消す為に、レイ君と愛し合っていた幸せの時間を思い返しては、それが崩れ去った今を実感し後悔に涙して自爆する始末。
何もかも気付くのが遅くて愚かだった私。
だからこそ、私は変わらないといけないと分かっている。
これは切っ掛けだ、レイ君をより深く愛する為の禊。
そう頭では理解しようとしても、愛する人が自分から離れて行くことに恐怖し、自分が悪いと分かっていても心は悲鳴をあげる。
そして、すり減っていく心と呼応するかのように、あんなに強かった性欲もすっかり減退して、自分で慰めようとすら思えなくなっていた。
きっとそんな私は、周りから見たら私は酷い有り様だったのだろう。
見かねた友達がレイ君に苦言を呈してしまった。
でも、これは完全に私の落ち度だ。
それこそ悲劇のヒロイン体質から抜け出せていなかった私の、きっとどこかで憔悴し切った姿を見せればレイ君が慰めてくれるんじゃないかなんていう甘い考えがゼロでは無かったから。
どこまでも私は甘ったれな私。
結局、目の前に事実を突きつけらないと理解できない愚か者。
友達に責められ困り顔のレイ君を見て、また自分の事で迷惑を掛けてしまった事を恥じた。
そして決めた。
過去に縋ってやり直すんじゃなく、一から、いやそれこそマイナスからやり直さないと駄目だと。
だから、まず私の浅ましい未練を断ち切ることにした。
私はレイ君に詰め寄る友達を止めると、周囲に宣言した。
レイ君とは別れたということを、その原因が私の浮気だって事も伝えて。
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